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〈結社誌読む 153〉『未来』2019年6月号  ~ビーバーが震えているよ、ほか

結社誌読む 153

『未来』2019年6月号



何ごとか思い遂げし者あるごとく梯子が立てり夕暮れの木に
/廣岡優



背表紙をしばしながめているところ岩波文庫はこころやすらぐ
/鈴木麦太朗



病んでゐる人たちの手は繋がつて輪つか状のチーズ味の菓子
/金尾釘男

→人が手をつないでいって輪をつくる。そこからお菓子になる。うまい棒を想像したけど、棒状じゃなくて普通に輪っかになってるやつかな。いずれにしても、そういうお菓子はもろい。それでいて歯にこびりついたりする。



本棚をどけるとシール16歳の酒井法子が保険をすすめる
/高田ほのか「最後の生家?」

→本棚をどけるとシール、がたまらない。オレも子供の頃はところかまわずシールを貼ってた。「酒井法子」は意味が強い。実際にそうだったから変えられない人名なのかもしれないが。



ビーバーが震えているよ/全世界同時株安/震えているよ
/西村曜「神戸どうぶつ王国吟行」

→株安は人の世界の話だけど、株安のせいでビーバーが震えているみたいだ。
テレビのチャンネルを変えまくっていると、こんなふうに動物番組とニュースが重なることもありうる。どうぶつ王国吟行とタイトルにあるからテレビ読みは苦しい。



炭酸を口に含んで目を閉じてうごめくものの感触を得る
/戸田響子「カーニバル」

→「シリーズ 今月の一人」というページから。塔でいう「風炎集」、短歌人でいうと「卓上噴水」かな。歌数は9首なのでそれらよりは少ない。
「うごめくものの感触」がこわいところ。口のなかに生物がいっぱいいるみたいだ。



ちりぢりに芝生を跳ねる風船を絶望的に追う老警官
/三輪晃「春のサーカス」



骸骨を刷りしシャツ着て訪れる介護ヘルパー Good Morning
/星河安友子『歳月はかへらず』



ひげを抜く癖を咎めるまなざしを察知するちから得たり夫は
/吉村桃香

→人と暮らしているうちに人が変化する、そのちょっとしたところをすくいとっている。実に小さな「ちから」だ。
癖をやめてくれるわけではないようだ。



うすく開くまなこの底へひさかたのひかりの春の流れ入るかな
/壱羽烏有

→春の陽射しのなかで目覚めている。読んでなんともいえずいい気分になる。三句からのハ行とか「の」の連続の効果だったりするんだろうか。
「春のひかりの」じゃなくて「ひかりの春の」であるところ。春という季節がじかに目から入ってくるみたいでいいな。
関係ないけど、紀野さんの欄ではこういう語順についてよく指摘している印象がある。



黄の付箋貼りて回せば地球儀にタジキスタンの位置は明らか
/かみのきみえ

→この歌の前の歌を見ると、この地域に興味があるようだ。
地球儀に付箋っていう発想がなかったので驚いた。グーグルマップで拠点に星印をつけたりはするけど。結句いいなあ。明らかにするために貼った付箋だ。



ドアのところで立って話しかける ないよね いないから探したりする
/唯織明

→一連のどの歌もひらがなと一字あけが多い。二人いるうちの一人だけを見ているような感覚だ。不思議な味があって気になる。



クレッシェンドで終わる曲きくそういった言葉に反論しなくてもいい
/佐藤真美「短歌バトル題詠」



背中押すわが手を離れブランコが空に近づくときに笑ふ子
/馬場順子



テレビにて幕下相撲ゆるらかに医院に次いで薬局に見る
/大谷ちか子





ということでこの本おわり。けっこう引いたなあ。



『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
https://t.co/RAzMz82BPF
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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