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永田紅『春の顕微鏡』  ~しゃるしゃるとペダルを、ほか

歌集読む 208

永田紅『春の顕微鏡』。
青磁社。2018年9月。第四歌集。



論文に説明されたる症状の痛ましとコーヒーを淹れに立ちたり
/永田紅『春の顕微鏡』



当たり障りなき発言に失望さるるを怖れつつ空調の音を聞きおり
/永田紅『春の顕微鏡』

→「空調の音を聞きおり」。発言しているのか、発言した直後なのか。誰もなにも音をたてず声も出していない。空調の音にしずけさがあらわれている。



アメリカのスペースシャトルの墜ちし日に教室で女性教師は泣きぬ
/永田紅『春の顕微鏡』

→ここだけ引いてもわかりにくいな。「十歳のころ」という、アメリカでの生活の一連。星条旗や愛国心の歌があり、この歌がある。
「泣きぬ」って普通にあるけど、日本の教師は泣かない気がする。



横顔に親しみてただ見ていしがふいに振り向き時間を問えり
/永田紅『春の顕微鏡』



学振(がくしん)が苦心、科研費書けん日、と言葉に遊ぶを息抜きとして
/永田紅『春の顕微鏡』

→『塔』の編集後記で、こういう遊びで盛り上がったって書いてある号があったよね。二つあるがどちらも略語から始まる。
言葉遊びの裏になにやら張りつめたものがある。



まだ居たきこの家なれば花の種かさかさ振って庭を歩くよ
/永田紅『春の顕微鏡』

しゃるしゃるとペダルを逆に漕ぐときの力の抜き様(よう) 歳を重ねて
/永田紅『春の顕微鏡』

→「かさかさ」の歌と「しゃるしゃる」の歌を引いた。
自転車のペダルを逆に漕ぐとたしかにやたら軽い。力の抜き様というなら、かなり力が抜けている。「しゃるしゃる」がうまい。



書いたものぜんぶ消すとき破らぬよう別の力も必要だった
/永田紅『春の顕微鏡』





丸つけた歌はそんな感じ。

2006年から2011年までの作品を収めたということで、「母」の死の歌がある。家族とか植物とか研究とか、そういうことが主なテーマなんだろうけど、そこに興味が持てなくて想像することも難しい。

この本おわり。
んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。
2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

「未来短歌会」所属

Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)

第61回 短歌研究新人賞 受賞(2018年)

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