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髙橋みずほ『白い田』  ~しとしと 雨 しとしと 雨、ほか

歌集読む 207
髙橋みずほ『白い田』。
六花書林。2018年2月。




本のなかには作者の情報があまりないんだけど、Wikipediaにくわしい。「夫は歌人の吉野裕之」とあった。仙台生まれの方なんですね。歌集がたくさん出ている。

パラフィン紙っていうんですかね。カサカサしてて白く曇った紙が歌集をカバーしている。オレはこういうのは取りたくなっちゃうんだけど、接着されていた。



子守唄やさしきおとのつらなりにねむる赤子らふたつ耳たぶ
/髙橋みずほ『白い田』



屋根を打つ音のしばらく雨の粒に消えゆくおもいでのある
/髙橋みずほ『白い田』

→57577とは異なる短歌が多く見られる。この歌の場合は「雨の」が三句と読める。この前か後かに空白ができる。前かな。



天井に影のびていて見守っているようなり 淡さ
/髙橋みずほ『白い田』



しとしと 雨 しとしと 雨 ひとつ雷ありてひと日のおわり
/髙橋みずほ『白い田』

→なんとぽっかりした歌だろう。天気とのその音だけだ。生き物の気配がまったくない。
「しと」か「ひと」が間隔を置いてずっと出てくる。ひらがなと漢字も間隔をおきながら繰り返される。



にくしみがふつふつとあることをつかれてしぼむ紙の風船
/髙橋みずほ『白い田』

→ぽんぽんとはじかれている紙風船だが、ついたらまずいところを突かれてしまったようだ。図星をつかれた人の心のようでもある。人の心はもろいということか。
結句ではじめて漢字が出てきて、これがしわくちゃの紙みたいだ。



ひと粒をつまんで子供口にする信じるものを舌にてさぐる
/髙橋みずほ『白い田』

→子供が知らないものをはじめて食べている様子か。「信じるものを」がいい。うまいのか不味いのか中に種があるのか。食べ物のこととは限らないようにも見えた。



吐く息のゆきさきわからずおしだされくらりねっと
/髙橋みずほ『白い田』

→「ゆきさきわからず」は息の視点。楽器の歌だが、音ではなく息のことだけ言っている。
短歌としてはだいぶ短いようだが、結句にクラリネットの音があると想像してみたくなる。



ふとふいになんともならなくなりてしずくのかずをかぞえておれば
/髙橋みずほ『白い田』

→しばしば三句が欠けるんですね。まるごと欠けることもあれば、三文字だったりする。はじめはとまどうが、歌集の後半になるとだんだん読んでてノッてくる。
ふ→ふ、な→な→な→な、しず→かず→かぞ。こうしたところも「ノッてくる」につながっているかも。



しずかにうたをうたおう木の葉の下でなにかが変わってしまうから
/髙橋みずほ『白い田』



もういいかいもういいかい返事なく空のかぎりへ声かける鬼の子
/髙橋みずほ『白い田』

というような歌を単独で引いてもしょうがないといえばしょうがないのかもしれない。歌集の終盤では父の死後の空白が詠まれる。



屋根雪おちて今ふとおもう音なり
/髙橋みずほ『白い田』

最後の歌を引いた。
一ページ三首だったものが二首になり、一首になる。どこか欠けがちだった一首の歌が、さらに短くなってゆく。それがまるで死者を雪がしずかに覆ってゆくようで、感銘を受けた。

あらためて表紙のパラフィン紙を思うわけです。歌集自体を雪が覆っているようだと。短くて画数も少ないタイトルも効いている。




この本おわり。




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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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