FC2ブログ

川野里子『硝子の島』  ~ゴワッと黒き空をひらきぬ、ほか

歌集読む 205



川野里子『硝子の島』
短歌研究社。2017年11月。第五歌集

帯の文字の一部がでかいが、どういう基準ででかくしたのか。



高層マンション怖ろしければ見上げをり詰問のごとき高さとおもふ
/川野里子『硝子の島』


マスク外さぬ若者をりてそこのみが虫食ひ問題のままなる白さ
/川野里子『硝子の島』


あさがほの仕事は花をひらくこと出勤するがにつぎつぎ咲(ひら)く
/川野里子『硝子の島』

→しばしば出てくる比喩がおもしろい。「ごと」とか「がに」ですね。

テーマの強くでた連作がつづく。たとえば最初の「おほきな花」という一連では、13首のうち6首に「スマトラオホコンニャク」が出てきて10首に「花」の字がある。これが好きなら楽しいだろう。



がんばらうにつぽん がんばらうにつぽん 木霊かへさぬ森しんとある
/川野里子『硝子の島』



蝙蝠傘(かうもり)はさすとき恐ろしき音したりゴワッと黒き空はひらきぬ
/川野里子『硝子の島』

→傘をさすときの音の「ゴワッ」がいい。これを怖いと思ったことはないが、言われてみると怖いような気もしてくる。
これを受けてその次に落下傘部隊の歌があるからそれも引いてみよう。

落下傘部隊のやうに素早く傘たたみ地下鉄にあまた人潜りゆく
/川野里子『硝子の島』

→雨の日の通学通勤の人々の様子が、まるで戦争だ。さっきの「恐ろしき音」や「黒き空」にも戦争がからみついてくる。



夜のトイレしばしの孤独にみつめゐき「混ぜるな危険」と書かれしボトル
/川野里子『硝子の島』



さうめん流しひゃーとさうめん流れゆきわれとわが母取り残されぬ
/川野里子『硝子の島』

→さっきの「ゴワッ」もよかったけどこの「ひゃー」もいい。涼しげで、速さがあって、そうめん自身が叫んでいるようでもある。
老いた母についての一連。



まはつてまはつてまはつてまはつて徘徊は花吹雪のやう老人歩く
/川野里子『硝子の島』

→最後も比喩の歌を引いた。くるくる回る花びらと、徘徊する老人が重ねられる。行こうとしてもたどりつかない歩み。少し美しいがだいぶ悲しい。



連作がつよいと書いたけど、知らないものや興味ないものがテーマになってるとその章がわからない歌、とばす歌だらけになる。それはまあオレの知識や経験の不足もあります。

この本おわり。
んじゃまた。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR