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穂村弘『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』読む

短歌の本読む132

穂村弘『短歌ください 双子でも片方は泣く夜もある篇』
2019年3月




オレの歌も二首載っているんだけど、当時の年齢になっていてちょっとだけ若い。これに載るのも最後だな。帯に使ってもらうことはなかったな。

いつもの感じで引いていきます。






コンビニでアイスを買った夢を見た深夜、雨、祖父、ねむるように死ぬ
/栗原夢子



今なにをしてますか 私 私はね すべてが不思議でならないのです
/佐内あい子

→「今なにをしてますか」と「私」のあいだに「あなたこそ何をしてるんですか」ってきかれたんだろう、と読めるけど、不思議そうな人なので、きかれてないようにも思えてくる。



誰もいない部屋のテレビがらんらんと美味しいお店すすめ続ける
/斉藤さくら

→きかれてないのに言う、といえばこっちがそうだ。すすめているのに、まるで貪るような「らんらんと」だ。

こういうときに一番思い出す「らんらん」が、アンパンマンのエンディングテーマの「めだまがらんらん ばいきんまん」だ。



地震です あなたもどこかでゆれている あっ とか言って別の誰かと
/ジュン

→自分の身の安全とかをすっとばして「あなた」と「別の誰か」に向かうところ。
「ジュン」と名乗るような人の短歌が読める場所、なかなかないと思う。変わったペンネームというわけでもなくて、カタカナのジュン。



くそ暑いのにどろどろ系ジュースばかり飲む奴がこのマンションにいる
/北山文子

→変わってるけど、どんな人なのかまったく想像つかないな。そしてそれが近くに必ず、いる。



いつきみを嫌いになってもいいように背景から描いてゆく絵
/鈴木美紀子





愛し合うふたりのしたをかなたから来てかなたへと向かう地下鉄
/泉陽太郎


高架下を歩いていたら高架上を電車が走る しぶとく生きる
/柴田葵「母の愛、僕のラブ」

ふたつ並べてみると、上と下が逆だったり、感情もだいぶ違っている。



グローブは百歩譲ってバットにもできると思う逆は無いけど
/和多鍋橋

→野球するのにバットがなかったりグローブがなかったりするのか。道具や人やスペースの足りないなかで遊ぶっていうことが、昔はあったなあと思い出す。なんて、しみじみする歌ではなさそうだが。



私んちも引っ越しすればいいのにと独りギュンギュン揺らすブランコ
/タンポポ

→引っ越ししたからってそんなに楽しいとは限らないんだけどさ。でもこういうことがうらやましくてたまらない時期があったな。意地になって激しく遊んだりするんだよな。
ブランコで「ギュンギュン」はなかなか出せない。



ガラガラうがいをしている口の中 見せようとしてこっち来た人
/ボリンボリン盆

→見せてどうするんだ。逃げたくなる。
っていうか、なんだろうこのオノマトペ的な名前は。



ほのぼのとキャッチボールをしていたら突然アンダースローに変わる
/土居健悟




読みながら丸つけた歌で、いま読み直してもおもしろかった歌はそういう歌でした。
キャッチボールとか、ガラガラうがいとか、ブランコとか、子供のころっぽいなあ。
この本おわり。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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