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「短歌研究」2018年8月号を読む  ~だんだんベローチェをスルーする、ほか


「短歌研究」2018年8月号



四階の窓から校庭の人に話しかけてる夕方ごろに/永井祐「思い出す」
→「平成じぶん歌」から。これは30首で平成の30年をふりかえるという企画だ。その年の社会の出来事とか、自分の身に起こった出来事を短歌にしている。そんななかで見ると、永井さんは独特だ。これは平成3年の歌。

オレも四階建ての学校に通っていたので、その感覚を思い出してみる。うーんよく思い出せない(四階から飛び降りたこともあるのに……)。
「校庭の人」は生徒か先生か用務員さんかもわからない。四階からだとどれでもない「人」って感じなのかな。「夕方ごろ」もおぼろげでいい。遠い記憶だ。



ガツン、とみかん途中で買って深夜までやってる本屋までずっといく/永井祐「思い出す」
→ただの商品名だとわかっても初句の「ガツン、」は印象が強くて、残っていく。この「、」は元々の商品名にある。
「ずっといく」とか出てくると、たまんないよね。うれしくなる。「ずっと」は本屋まで歩く時間と距離が長いってことだな。本屋の営業時間も長い。



だんだんとベローチェが近づいてくるだんだんベローチェをスルーする/永井祐「思い出す」
→さっきの本屋もだけど、こういう歌に「平成26年」といった詞書がついているからおもしろい。いやいやほかにこの年の出来事あるでしょと。
でも短歌を読んでる時って「いやいや、これがこの年のこの人の大切な何かにつながっているのかもしれない」あたりまでは迎えたくなる。

「だんだん」「スルーする」って、おもしろい言い方。これは歩いてますね、移動している速度を考えると。すれちがってる真っ最中なんですね。ベローチェの真ん前を歩いている。



昼の窓磨きてをればシャボン玉のなかなるごとしこの世のことは/佐藤モニカ「早春」
→四句まで読んで、窓の内側にいる自分がシャボン玉の中にいる感覚なのかなと思っていたら、結句でぐるんって逆転した。
べつに内側から磨いているとは言ってないから、オレが勝手に逆転されたってことも考えられるけども。



一つづつ手放し今は数隻のボートが胸をただよへるのみ/佐藤モニカ「早春」



君の手を小さく感じるよこんや月光フフッフフッ月光/雪舟えま「風もないのにラーブラブ」

→下の句に目がいく。フフッと笑っているのは月なのか自分なのか。二つの「フフッ」のあいだに鏡が置いてあるみたい。わりと落ち着いた上の句だから下の句がいきるんでしょうね。
月光が二人のどちらかの大きさを変えているの?



雨上がり 言葉を使って為し遂げるべきことを知る前に死ぬだろう/馬場めぐみ「ライラック」



ゆるやかにけれど確かに崩れゆく砂浜の城 すなはまのしろ/松村正直「富士の見えるあたり」

→漢字をひらがなにすることで崩れてゆくようすを表現している。ありそうで、でも無かったやり方なんじゃないか。オレはたぶんはじめて見るけど。
一字あけのあいだに波でもきたんだろうか。







この号は第8回中城ふみ子賞の発表号で、次席にオレの連作が掲載されています。選評もいただきました。
つい先日、賞状も届きました。





以上です。




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【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

2018年7月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/nb3e7945830c7

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【2】 https://t.co/lcoeLM1kt6



などなど、
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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