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ナイス害『フラッシュバックに勝つる』を読む  ~ヌルヌルしてて落ちるシステム、ほか


ナイス害さんの歌集『フラッシュバックに勝つる』を読みました。
2017年11月。120ページで、1ページに3首。600円。いつもは価格は書かないんですが、安いので書きました。

これに関しては、仙台で読書会があったんです。ちゃんと読んでない段階でそれに参加しました。読書会やりながら読んだ感じです。読書会がなかったら読まなかったかもしれません。

それから普通に全部読んだので、あらためて歌を引いてなんか書きます。
オレでも思いつく程度のことは読書会でだいたい出つくしたような気がします。



巻頭歌。

真夜中に千年眠る伝説の剣とみなしてポッキーを抜く/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』

という歌から始まる。
こういうことオレも考えたことあるし、うんうんわかると思うけどさ。

「真夜中に千年眠る」とつながるとうまくない。
語順。「真夜中に」が「千年眠る」にかかってるわけじゃないのはわかるんだけど、こういうのを解消していくのが歌を磨く・完成させる、ってことだと認識しています。



お願いです神様BEGINの右の人の顔を思い出させてください/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→これ単体でも神様の無駄使いが楽しい歌なんだけど、官能的な一連のちょうど盛り上がってきたところに置かれているのが良かった。



パトカーの後部座席で俺たちは虹に等しい夢を語った/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→パトカーの後部座席に座ってるのって、どういう状況? 犯罪や事故になんらかの形で関わってしまっている非常時なのでは。でもなんかしみじみしちゃっているところがおもしろい。
パトカーの後部座席と夢はいい距離。虹と夢は近すぎる。言葉と言葉の距離はけっこう気にします。

しばらくしたら「虹に等しい夢」は、これはこれでアリな気もしてきた。あえて同じような言葉をかさねて美しさ・はかなさを強調していると見れば。



真っ青なシチューを作ればこの星もいよいよですね風が冷たい/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→真っ青なシチューはおいしくなさそう。シチューってあったかいイメージだから、寒いイメージの青とは相性がわるい。
人類が青いシチューを食べるように変化する頃、それがなにかにつながって絶滅するのか。結句は平凡なようだけど滅びの予感なのでしょう。



龍の背にせっかく乗れたのにすごくヌルヌルしてて落ちるシステム/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→バラエティ番組の一場面のようだ。あわてながら落ちていく芸人がイメージできる。
と同時に「システム」と言われると中澤系を思い出す。あらかじめ落ちるように決まっているのだ。ヌルヌルにした制作者がいる。



風がドキドキしてる! 残りの人生へようこそ/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→テンションが高そうな雰囲気だけど、よく見るとなにも言ってない。そこが見事。一瞬、胸おどるような新しい世界にきたような気分になる。でも前半は何言ってるのかわかんねえし、言われるまでもなく人は残りの人生を生きているんだよ。



ピリオドという名の車がもうそろそろ発売される ハンドルもない/ナイス害『フラッシュバックに勝つる』
→終わりの予感を言い表している。「ピリオド」がいかにも車の名前っぽくて、センスを感じる。
ハンドルがないということは、この車は終わりに向かって直進するのだ。



最後のほうは遊び心が満載で、おもしろく終われた。最後におもしろいと、全部おもしろい気分になる。したがっておもしろい歌集です。
この本おわり。






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角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
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2018年7月のオレの短歌とその余談
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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