FC2ブログ

「塔」2018年3月号を読む  ~さびしいときのトラの鳴き声、ほか

「塔」。2018年3月号。
ひさしぶりに塔をやります。



まひるまのボタンを押せば繰り返すさびしいときのトラの鳴き声/吉田恭大
→動物園とかそういう施設かなあ。ボタンを押すと音声がでる仕組みになっている。さびしいときのトラはどんなふうに鳴くのか、すぐには思いつかないので頭のなかで鳴らすのにひと工夫要る。繰り返しボタンを押してるとすれば、その行為こそさびしい。
「まひるま」は平日の空いている場面を想像した。休日はにぎわうだろうけども。
ひとりでそっと押していてほしい。室内にさびしい獣の声が響きわたる。



日替わりを頼んだ店の背後から入った大量の追加点/吉田恭大
→これも似たような受け取り方をした。いつも行ってるような平凡な店で、テレビの音かラジオか、野球かサッカーかわかんないけど、すごい盛り上がりで「入ったー!」とか「決まったー!」とか言っていて、でも店はいつもの感じで、こちらはあまり試合に関心がない。試合は一方的な展開となり、受け手のこちらがさらに否応なく受け手になる。

※この方の「吉田」の吉は土に口と書くほう。



右左分かれて逃げた雀らがたちまち一緒になりぬ空にて/八鍬友広



決着をつけにあなたに会いに行く街中の音すべて爆発音/王生令子

→決着をつけようとする心が音の感じ方にまで影響しているというのか。爆発しているところを歩いていくようで迫力がある。「すべて爆発音」という字余り、爆発している感があっていいんじゃないでしょうか。



全国で一番乗りと言われれば何やらうれし歌会記なれど/松塚みぎわ
→結句で急に小さい話題になるので、意表をつかれた。結社にはよくありますね、歌会記。誌面づくりの様子がちょこっと垣間見える。



白線をこえれば真冬 嘘をつくこどもの影がまたうすくなる/田村龍平
→言ってることはわかんないけど、イメージは湧いてくる。「白線」、なんの白線? 電車? ということに手がかりはなく「真冬」がくる。白線が降り積もる雪のイメージにかわる。手がかりがないのでこどもも白いイメージで、影がうすくなるのは雪の影響なのか、嘘をついたせいで消されたのか、嘘ってなんなのか、嘘もいっしょに薄くなっていくみたいで、「また」ってことはこれ以前の時間の嘘や子供や影やそのうすさがあったわけで。
……って書いてもなにもかもモヤモヤしてはいるんだが、それぞれ言葉が響きあっているように思える。



ぶれぶれの写真に残るよろこびが削除の指を遠ざけてゐる/濱松哲朗



始祖鳥のごとき声にて子が叫ぶ手を打てば音生まるると知り/益田克行

→始祖鳥のたとえがすごい。下の句がしっかりそれを支える。子にはなにもかもが大発見なのだな。



桃というさびしき回文 階段を下りても夜空、まだ明るくて/白水ま衣



できそうな仕事を探す(できそうな仕事など無い)仕事を探す/田村穂隆

→こういうことあるよなと思う。こんなにスッキリした形で言えることなんだなあ。



なぜ人は学ぶのですか この道を銀杏の黄色が埋め尽くすから/紫野春
→いま見えているものがいっせいに覆われて見えなくなる時がくる。そんな危機も思うけど、でもなんて素敵な答えだろう。
危機とかは無しで、童謡「ぞうさん」の「そうよ母さんもながいのよ」みたいな優しい(けどよくわからないところもある)ものとしてふわっと読んでもいいかもしれませんね。



朝日さす 一方通行標識の矢印に力ありありと見ゆ/干田智子




3月号は以上です。
塔、上手い人たちがなんてたくさんいるんだろうと思う。読んでるだけでなんかちょっと自分まで上手くなる気がしてきました。

この本おわり。



▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




2018年6月のオレの短歌とその余談
https://t.co/sCG5JNotFG

2018年7月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/nb3e7945830c7

もっと賞の話がしたい!/オレの企み
https://note.mu/mk7911/n/nc2b1b8188836

「新人賞 連絡」
https://t.co/ZTB10Ogssw

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://note.mu/mk7911/n/n58e5f4337568




などなど、
500円ですべての記事(約100記事)が読めます。よろしければどうぞ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR