斎藤茂吉『白き山』を読む  ~出で入る息をたのしみて、ほか


講談社の日本現代文学全集で斎藤茂吉の歌集『白き山』を読んだ。山形の地名が多く出てくる。初句「最上川」が多い。蔵王なども詠まれる。



飛行機の音のきこえし今日の午後われは平凡なる妄想(まうざう)したり/斎藤茂吉『白き山』



かすかなる出で入る息(いき)をたのしみて臥處(ふしど)にけふも暮れむとぞする/斎藤茂吉『白き山』

→自分の呼吸する息をたのしんでいるというのか。身近すぎて気づかないようなところだ。



岩の間にかぐろき海が見えをれば岩をこえたる浪しぶき散る/斎藤茂吉『白き山』
→見える海から、散るしぶきへ。海とは距離のある場所にいるのかと思ってると、海はかんたんに岩を越えてくる。急に海が迫ってきたみたいで、力がある。




にごり酒のみし者らのうたふ聲われの枕をゆるがしきこゆ/斎藤茂吉『白き山』

われひとりきのふのごとく今日もゐてつひに寂しきくれぐれの山/斎藤茂吉『白き山』

少年の心は清く何事もいやいやながら爲(す)ることぞなき/斎藤茂吉『白き山』

あかときの山にむかひてゐる如く大きなるかなやこの諦念(あきらめ)は/斎藤茂吉『白き山』

→晩年の歌集だからか敗戦のことがあってか、さびしい愚痴っぽい歌が目立つ。にごり酒を飲んでうたう仲間に入ることはなく、しかし歌声にゆさぶられている。ものをいやがる少年に清さを感じるのも、自分のなかには山のようなあきらめがあるばかりだからだ。



春彼岸に吾はもちひをあぶりけり餅(もちひ)は見てゐるうちにふくるる

人は餅(もちひ)のみにて生くるものに非ず漢譯聖書はかくもつたへぬ
/斎藤茂吉『白き山』

→となりあって餅の歌がふたつある。餅をあぶっていたら訳された聖書の言葉を思い出したという流れか。おもしろいつながりだ。
「人はパンのみにて~」とは聞いたことあるが、餅に訳されている。餅は主食でもないし、ニュアンスが違うよねえ。
オレは餅が苦手だから、それのみで生きることになったらとても困る。



自動車のはじめて通るよろこびをこの部落びと聲にあげたり/斎藤茂吉『白き山』



馬叱る人のこゑする狭間(はざま)よりなほその奥が紅葉(もみぢ)せりけり/斎藤茂吉『白き山』





以上です。
んじゃまた。



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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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