半藤一利『昭和史残日録』を読みおわった。おもしろかったな。ちくま文庫、2007年。
この著者の本は初めて。昭和のはじめの年から、昭和20年までの出来事が名言珍言でまとまっている。ひとつの事柄が1ページでコンパクトに書かれている。
昭和のほかに「上治」という年号も提案された、というところから始まる。
昭和三年には「清き一票」という言い回しがあったことを知った。
「位置について、ヨーイドン」というかけ声が昭和三年に決まった。それ以前は「支度して、用意」などと言われていたとか。
そういうことが書いてある本。
それがみるみる戦争の色が濃いものになっていく。
昭和五年生まれの著者の体験も書かれている。
文学関係の話題もある。愛国百人一首を暗記させられた体験が書かれている。「思い出せるもののいくつかを」と、三首を書いていて、ほんとに覚えさせられたんだなと思った。
流行歌や替え歌についても書いてある。そういうのも、この人はその時代を本当に生きてたんだなと思う。「ぜいたくは敵だ」の「敵」のうえに「素」と落書きされていた話とか。歴史年表に必ずしも出てこないような話がいい。
『敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花──本居宣長の歌より名づけられた敷島隊(五機)、大和隊(六機)、朝日隊(二機)、山桜隊(二機)が、史上はじめて編制された神風特別攻撃隊である。』と書いてあった。これ知らなかった。こんなふうに短歌が使われうるっていうのを知った。
(「だるい隊」「せつない隊」とか考えていた)
しかしさ、全部暗唱させるとか、ばらばらにして何かの名前にくっつけるとかそういうのって、一首一首の歌を味わうことから遠いところにあるなあ。
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本居宣長の歌の件をまだ考えていたんだけど、 どこを切り取ってもご立派な言葉が入ってるからバラバラにされるんだろうなと。
「だるい隊」「せつない隊」とネタみたいに書いたけど、どこを切り取っても日本的なご立派な言葉が出てこない名歌が穂村さんのあの歌だ。
サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい/穂村弘現代の短歌は、バラバラにして特攻隊の名前にできるような短歌からは遠いんじゃないでしょうか。ずっと離れているものなのか、どこかで戻ってくるものなのか。ゆっくり戻るのか、掃除機のコードみたいにいくら伸ばしてもボタンひとつでシュルッと戻るのか。
歴史についてはよくわからないんだよ。わからないから知りたい。
いまが戦前だ、みたいなのが分かるときと信じられないときがある。テレビやネット見てるとわかる気がするが、仕事や家族の間にいるときは実感がない。画面越しにだけある。
いまに世界がダメになるぞ危ないぞっていうのは、宗教でもよく言う。あのときといまはアレが一致している、だから危ない。
言われると説得されるけどすぐ忘れて休日は二度寝する。
いまは戦前だ、みたいなことを短歌で言うと特に新聞歌壇でウケるから、ウケたさのあまり寄っていっちゃうんだけど、ちょっと考えなきゃなと思うよ。だってそれって、逆を書けばウケるようになったら逆を書くよってことだから。
ウケたい気持ちにやられないことだ。飲んでも飲まれないことだ。
っていうか他の人はマジで言ってるのにオレだけマジじゃなかったら色々悪い。言ってるうちにマジになることはあるかもしれないが。
いろんな意見や情報があるけども、その時その時のツイートも報道もいいけども、特に詳しい人や経験した人たちが何を言ってるかをなるべく広く読んでみたい、というのが最近の心境であります。
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#2017上半期短歌大賞 50首 Togetterまとめ https://togetter.com/li/1126231今年の上半期に読んだすべての短歌から50首選んでまとめました
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