対訳つきでバッハの「マタイ受難曲」を聴く  ~コテコテ大阪弁ほか

6/11

"J.S.バッハ《マタイ受難曲》第1部全曲 カール・リヒター(1958)"
https://youtu.be/ba9TMBUAmMc
対訳つきでマタイ受難曲を聴いた。これは前半。

リヒターの「マタイ受難曲」は2001年くらいにCDを買って聴いてたんだけど、解説書にはドイツ語と英訳しかなかった。あらすじは知ってるから歌詞は気にしないで今まで聴いてきた。バッハの音楽だけでもじゅうぶんだった。

でも、こうやって歌詞を見ながら聴くとちがうね。重みがちがう。話の展開が遅いんだよ。この遅さが力になっている。

イエスが、もうすぐ私は十字架にかけられるよって弟子に話すところから「受難曲」は始まる。
そこからゆっくりゆっくり話は進む。不吉な暗い空気が覆っている。
イエスは自分の運命をわかっていて、冷静だ。ユダが裏切るのも知っている。知っているけどどうにもならなくて、巨大な力がすべてを動かしている。

ユダが「裏切るのはこのわたしだというのですか?」と言ってイエスが「その通りだ」と答える場面は、ぞくぞくした。

そこまで見抜いているのにやっぱり裏切られてしまう。前もって言ってあるのに弟子たちは寝てるし。

これから起こることがわかっているのにどうにもならなくてじわじわ事が進んでゆくことに、おそろしい気持ちになる。
バッハの曲は荘厳で、話はなかなか進まず、内容が重い。何重にも重い。のまれる。

一時間半かかって第一部がおわり、ようやくユダが裏切ってイエスが捕まるところまですすんだ。








"J.S.バッハ《マタイ受難曲》第2部全曲 カール・リヒター(1958)"
https://youtu.be/8ZUFrlzX4Ko

後半聴いた。話の展開が遅いって書いたけど、ストーリー的には無くてもいいような曲がはさまってるんだよね。それは何かっていうと、信仰の曲だ。私たちは神を信じますとかイエスはた私たちを慰めるとかそういうのがはさまっている。

それによって曲は長くなるし展開は遅くなるんだけど、それがあるから「受難曲」が信仰の音楽になっている。物語であると同時に、やっぱりこれって宗教だったんだなと思う。オレは物語と音楽には興味あるけど信仰がないからやや足止めされたように感じる。


ペトロもイエスを裏切る。イエスのことを「知らない」って三回言ってしまう。そのあたりはテンポよく畳み掛けてたのがよかった。
知ってるエピソードだけど、見事だと思った。

ユダは後悔して、イエスを売って得た銀貨30枚をなげつけて首をくくる。
そのあとみんなで銀貨を拾い集めて使い道を協議している。そんな場面があったのは忘れてた。
死んだ人はそのままうっちゃられて、銀貨のことが細かく書かれるのは、痛烈なものがある。


イエスが死ぬところで終わるのかと思ったら、死んでも残り30分もあまってて、どうするつもりかと思った。悲しんだり墓の下のイエスの安息を願って終わる。

終曲がすごく好きだったんだけど、歌詞はそれほどでもないと知った。



あと、バッハといえば器楽曲ばっかり聴いてたから全然気がつかなかったんだけど、バッハって物語に曲をつけるのも素晴らしくうまい。

イエスが民衆に罵られるんだけど、罵りは罵りっぽい音になっている。感情にあわせた音楽がつく。地震のところは地震っぽいし。そういうのもバッハは自在にできるんだなと。



思ってなかったタイミングでイエスが亡くなるから驚いた。忘れてた場面もあるし、聖書を読み直してみたい。
有名な「エリエリレマサバクタニ」にバッハがどういうメロディーをつけてたかという興味なども持って聴いた。



それにしてもだよ。バッハが音楽で何をどう描いたかというのをこうして味わうと、なんてどでかい仕事だろうと思うね。






6/12


"【Bach】コテコテ大阪弁訳「マタイ受難曲」 第01曲"
https://youtu.be/EW63dWn88Tw

おもしろいの見つけた。
映像はリヒター指揮によるバッハのマタイ受難曲なんだけど字幕がコテコテの大阪弁になっているという動画。2010年から少しずつアップされていて、2017年になってからも更新されていて、いまだ未完。


福音史家も含めて全員が大阪弁になっている。はじめは抵抗を感じて、つぎはおもしろくなってきて、だんだん慣れていった。
普通の訳とはかなり印象が変わる。



受難曲を演奏している映像を初めて見た。全員が黒い格好をしている。内容が内容だからな。
声楽はパートごとに役があるけど身振り手振りはまったくなし。全員直立不動で歌う。
リヒターはときどきチェンバロを弾きながら指揮している。



昨日の動画で
「その通りだ」
と訳されていたイエスの台詞が、コテコテ大阪弁のほうでは
「あんたが言うたことや」
になってる。同じドイツ語を訳しているんだけど。これはだいぶ違うとおもう。



コメント見てたら、「大阪弁のクリスチャンは大阪弁の聖書を求めている」みたいなことが書いてあって、まあそれはひとつのコメントなんだけど、なんかいろいろ考えた。

宮城の言葉で書かれた本があったらオレは避ける。標準語のほうが馴染んでるし読みやすいから。

聖書を気仙沼の言葉に訳した人がいると知ったが、その内容まではネットで調べてもよくわからなかった。
気仙沼の言葉で落語をやってる動画を見たが、聞いてるのがはずかしかった。同じ宮城でもちょっとずれると言葉が変わる。

一番いやなのは、自分の地域をアピールするのに方言つかうやつ。「おらほさ来てけさいん」とか言って。普段の会話ではそんなの滅多に聞かない。ほとんどの宮城の人は「来てください」とか「来てね」って言うよ。ねじまげられて、いい気はしない。


話がそれてるけど、とにかくコテコテ大阪弁はおもしろくて、いい言葉だなと思った。罵る場面になると急に生き生きと豊かになるような印象だった。








6/13

一昨日、昨日とマタイ受難曲の話してきた。「聖書を読み直してみたい」って書いたけど、実際に読み直してちょっと驚いたことがあった。

「マタイ受難曲」はマタイによる福音書の26章と27章を音楽にしたものなんだが、バッハは聖書の文章にそのまま曲をつけてたんだと知った。

詩に作曲したんじゃなくて、聖書の文章に曲をつけている。それも26章27章の文章すべてに曲をつけている。日本語訳にして6000字か7000字の文章すべてにメロディーをつけて音楽作品にしている。

受難曲を字幕を見ながら聴いて、「これってどこまで聖書の記述に忠実なのかなー」と思ってたけど、聖書の該当箇所がまるごと音楽になっていたわけだ。
途中に讃美歌みたいなのがはさまるけど、それは福音書の文章ではない。



聖書を読んでて、一ヶ所だけ動画で見たやつと訳が違うところがあった。
近づいてご機嫌をとろうとしているユダに対するイエスのセリフが違う。
一昨日見た「オペラ対訳プロジェクト」さんの訳では「友よ、なぜここに来たのだ」だった。
それが、
昨日見た「コテコテ大阪弁訳」では「友よ、なんで来たんかいな?」になっている。この二つは同じだ。
だけど手元の新共同訳の聖書だとこれが「友よ、しようとしていることをするがよい」になっている。

これは全然違うよねえ。疑問をなげかけたのか、受け入れる姿勢なのか。
聖書の訳が何種類かあるのは知ってたけど、けっこう違うんだね。そのような、訳を見比べる面白さもあった今回のマタイ受難曲の鑑賞でした。






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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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