「未来」2017年5月号を読む  ~永遠に乾かぬ修正液、ほか


「未来」2017年5月号。
一ヶ月半遅れているが、見ていく。



エアコンのテープが風に躍りおり正攻法など考えいるとき/前川明人



三十年むかしの少女は言へりけり今夜のユーミンはつまんなかつた/山田富士郎「ベーグル&マフィン」



「ポイントカード貯めますか」「貯めます」ファイナルアンサーのごとく答えり/笹公人

→クイズミリオネア、いつのまにか終わっていてそれから何年もたった。
ミリオネアは数十万数百万という金がかかっているが、ポイントカードは数十円とか数百円だ。間違えてゼロになるスリルもない。現実のしょぼさをたっぷりとユーモアで包んだ。



何の役と問ひたれば「き」と答へたり樹はいいぞ樹は人を蔑さぬ/黒瀬珂瀾
→お芝居で木の役をすることになった子。ひらがなの「き」が樹と気づくまでにちょっと時間がある。それをおおらかに励ましている。
人は人を蔑するという苦味がひそんでいるのかも。



おじさんの顔の形の饅頭をふたつに割れば白き餡見ゆ/門脇篤史
→のんきなのか怖いやつなのか迷う歌だ。さらっと言うけど、饅頭が特定の人の形に見えるだろうか。さりげないようで、最初からすでにちょっと変わっている。餡は、まんじゅうとしては当然の中身だが、人の顔だったらありえない。当然をあえて言うことでそうじゃない方を予感させる歌、と読める。



会うときも別れるときもわたくしの体を駅の鏡は映す/岡崎裕美子



いっぽんをえらべばのこりのバラ売りのきゅうりのいぼがひかりはじめる/蒼井杏

→ひらがなの多い一連。選ばなかったものが良いもののように見えるというのは、よくあるなあ。隣の芝は青いともいう。特に野菜はひとつひとつが微妙に違うからね。
いぼが光るというのが面白い。選ばれたきゅうりのいぼだけは光っていないのだ。



ほしいものを訊かれてしまう誕生日永遠に乾かぬ修正液を/鈴木美紀子
→下の句が注意をひく。いつまでも修正液が乾かなかったら、いつまでも修正できない。上から新しいことも書けないし、他の紙とくっついてしまう。
だから願望としてはかなり奇妙だ。文房具としては不良品だ。
修正するのが人の記憶であるならば、思い出すのがつらいことだけれども無かったことにはできないししたくないことは、あるかもしれないね。



岡井隆さんの連載に大岡信の詩がでてくる。実はオレは大岡信のことは全然知らなかった。名前はよく聞くなという程度で。
この「人生論」という詩はすごくいい。何度も読み直して考える。



十二時の真下に六時…それなのに迂回していくしかない針よ/山階基

朝という時間は誰にも気づかれず終わる 台車を押す人を見る/竹中優子

→時間をあつかった歌を二つ。一方はじりじり進むしかない時間の歌で、もう一方はいつのまにか終わってる時間だ。



東京の避難シーンにいた人がなぜか釧路の漁村にもいる/岡本真帆「映像の日常」
→同じ役者をつかってるからだよ、と言ってしまえばおしまいだ。
オレと同じ顔の人が別の場所で別の人生を歩んでいたら、それがいつか映像にうつったら、と考えるとドキドキする。



あたらしいたましいになるあらましをスナック愛でおしえてもらう/田島幸

出勤にスナック「愛」を通過するつらく別れた人の名前だ|工藤吉生|うたよみん https://www.utayom.in/poems/140871
「未来」2017年4月号の歌。


→田島さんは富山の方だが、富山にも「スナック愛」があるのか。たしかにありがちな名前に見えるけれども。同じ名前のスナックを詠んでいたのでピックアップしてみた。



どこでどう擦りむいたのか母の擦り傷は記憶をしたたらせてゆく/多田愛弓




パソコンの凄いところはほっとくとあっという間に眠れるところ/鷹山菜摘

夢であることに気づいてしまうまで自分を抱いていてかまわない/鷹山菜摘

あの星がなんの星かはわからない しかしもうすぐ戦う星だ/鷹山菜摘

→鷹山さんの歌がすごくよかった。えっ? と驚くような歌だ。パソコンのすごさは起きてるときに色々できることだとばかり思っていた。夢だとわかる前と後のふるまい方。戦う星だとわかる力。
とても気になる。注目していきたい。



水曜日大雨が降り木曜日大風吹いてそして別れた/佐原啓子



未来5月号おわり。
んじゃまた。




▼▼



有料マガジン更新しました。
2017年5月に発表した/掲載された短歌をすべて見せます|mk7911|note(ノート)
https://t.co/IMj53ONdsM

これは歌をまとめただけの記事じゃなくて、自分の歌や掲載された媒体についてもいろいろ書いている。有料なので、それなりのことを書いている。



短歌パトロール日誌【4】2017.5/21-6/13|mk7911|note(ノート)https://t.co/lhsSQSM3jL

すぐに消されたエアリプにこたえる|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n16ba35458c13


帰ってきた汚染歌人
https://note.mu/mk7911/n/n3b3bdf5e932c

短歌と公募と賞金のこと|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n47a017bcce69


工藤の有料マガジン【500円】やってます。よろしくお願いいたします。










スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR