佐藤通雅『水の涯』を読む  ~まつすぐなおれたちの矢、ほか



こんにちは。


工藤吉生です。最近、クレヨンしんちゃんのチョコビアイスを食べました。中身はおいしくて、モナカはふつうでした。



今回は佐藤通雅さんの「路上」137号を2首だけやって、それから『水の涯』という歌集をやります。








このごろは人の葬にもめつたに行かぬ行つても明らかにその人は居ない/佐藤通雅「バーミリオン」

君を助けてやるんだよとミミズにいひたれど君はもがくばかりわがてのひらに/佐藤通雅「バーミリオン」

佐藤通雅さんの個人誌『路上』137号から引きました。
二首引いてみましたが、どちらも字が余っていてたっぷりしています。
一首目は、亡くなった人が葬式にいないという当たり前にあらためて気づく歌。
二首目は言葉や気持ちが通じない、切ない歌。ミミズを「君」と親しげに呼んでいます。てのひらの上にもがいているのがいかにも小さくて無力です。









つづいて佐藤通雅さんの第二歌集『水の涯』をやっていきます。
これは昭和53年の歌集。この前、仙台の定禅寺通りの古本市で見つけました。風があるのに野外で行われた古本市で、どの店も文庫100円そのほかの本200円でした。
箱に入っていたんだけど、きつくて出すのがひと苦労でした。



丁寧語は肩がこるのでここからは普通にする。



栞は前登志夫、田井安曇、小中英之。この頃からすでに、三人くらいが歌集評を寄せる付録みたいな「栞」がついてたんだな。若い有望な歌人ということを書かれている。通雅さんは昭和18年生まれだから、このころ35歳。




歌集にサインしてあったので、短歌研究2017年5月号のサインと比較してみた。かなり違うが、「佐」の右側と「雅」が近い。 https://twitter.com/mk7911/status/869908327219646466/photo/1




休日の鉄棒に来て少年が尻上がりに世界に入つて行けり/佐藤通雅『水の涯』
という歌が巻頭歌。見たことある。
小高賢さんの『現代短歌の鑑賞101』ではこれが代表歌とされていた。

小高さんは「写真でも、あるいは実際においても、一度もネクタイ・背広という佐藤に出会ったことがない」と書いている。
オレは出会ったことがある。



まつすぐなおれたちの矢をかはさむとまことひくつなものごしはする/佐藤通雅『水の涯』
→歌のなかの一文字だけを漢字にするというのは、珍しいやり方ではないが効果的と思う。ひらがなには曲線が多いから、「矢」にまっすぐな感じがでる。
「若い」は雑な言い方でよくないんだが、「まつすぐなおれたちの矢」なんて、若くなければ言えないだろうね。



いつさんにランナー駆けてもどらざる秋日の道冷えそめにけり/佐藤通雅『水の涯』

いきものをつひにあやめしか子どもらは炎昼の街鋭(と)き声に去る/佐藤通雅『水の涯』

足裏(あなうら)ゆ虹を小さく生(あ)れしめてはしるはしる渚の童女/佐藤通雅『水の涯』

走ってゆく歌、去ってゆく歌にばかり丸をつけていて、それが三首つづいた。ランナーや子供といったものが走っている。
このなかでは子供の歌が残酷で特に好き。いじめるだけいじめて、死んでしまえばもう用は無いというわけだ。



夫の死に泣きくづれゆく緩慢をやすやすと冬の画面は映す/佐藤通雅『水の涯』

"たけし 母の通夜で雷雨の中 号泣!"
https://youtu.be/Umu76AmBnQE
これ思い出した。記者が泣かせよう泣かせようとするんだよ。テレビって酷なことをするんだなと思った。

この歌は、「緩慢」と「やすやす」に温度差があらわれている。



告げえざる思ひのままに歩みたる夕汚れし敷石の道/佐藤通雅『水の涯』

たかぶりて人を刺したることのはもかなしみとしてバスを待ちをり/佐藤通雅『水の涯』

もの思う歌を二首。
一首目。「敷石」といえば有名すぎる白秋の歌がある。時間帯が「夕」になっていて、「告げえざる思ひ」がある状況となっている。汚れに気がつくのは、下を見て歩いているんだろう。
二首目のように怒りのある歌も、この歌集にはいくつか見られる。



追ひすがる熱き瞳のありしかど緑小暗き中に断ちにき/佐藤通雅『水の涯』



叢の戦ぎやまざる夜の庭子は起き出でて硝子に見をり/佐藤通雅『水の涯』



ひたひたと地を打ちて降る夜の雨ことばひとつを迷ひゐにけり/佐藤通雅『水の涯』




最後に「覚書」がある。
「結社から離れ、個人編集誌「路上」にたてこもる決意をした」
とある。ということは、かなり長い間この方は結社無所属でやっている。そして個人誌「路上」を続けている。
最近「路上」137号を読んだんだけど、「路上」は150号で終刊する予定だと書いてあった。

それより「たてこもる決意をした」だ。「たてこもる」なんて、人質をとった犯人みたいな言い方だ。最近も立てこもりの事件があったけど、そういう犯人はろくな結末を迎えないのだ。そこをあえてこういう言い方をしている。覚悟を感じる。
なんかいろいろ脱線した気がするけど、この歌集はこれで終わり。




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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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