「塔」2017年2月号を読む  ~つまりふつうの人といふこと、ほか

「塔」2017年2月号。
若葉集から月集に向かって読むようにしてるのでその順番で引いていきます。



ケイタイを耳にあてつつ歩きつつカバン持ちつつ傘もさしつつ/坂下俊郎
→「つつ」でどんどんつないでゆく、変わった形の歌です。はじめはよくある感じです。ケイタイを耳にあてるのは普通だし、歩きながらの通話もまあ普通です。ですがだんだん難易度が上がっていきます。
通話してるとは言わず雨が降ってるとも言わず、見えているその人の状態だけを写しています。



コピー機が紙にあたえるぬくもりよきみはひとりで帰っていった/安田茜



そんな恋なかつたんだけど髪の毛を乾かしながら泣きさうになる/穂積みづほ

→お風呂あがりにテレビドラマでも見てるんでしょうね。そこが省略されている。なにが省略されているかが読み取れると良い歌のように感じます。
髪を乾かしながらでも経験していない恋に胸を打たれることができるのが現代です。



わたくしは弱さを隠す弱い人つまりふつうの人といふこと/清水良郎
→「ふつうの人」って、あらためて言われると引っかかります。二度見してしまう歌です。人のありかたが多様になると、何がふつうであるとは言いにくくなるものです。
でもなかなか言い得ているんじゃないかと思って丸つけました。



地べたに座つて弁当を食ふ工員と目があふ大日本風力(株)まへ/久保茂樹
→「大日本風力(株)」がおもしろいんです。そんな社名をはじめて聞きました。「地べた」に「風力」、「弁当を食ふ工員」に「大日本」。取り合わせがいい。



機上より富士山見えて怖かりき置かれたるもののように影曳き/朝井さとる

石畳がつぎつぎ生えてくる街の月夜を駅にたどり着きたり/朝井さとる

→山が置かれたもののように見えたり、石畳が生えてきたりします。物のあり方といいますか捉え方といいますか、状態を変えることで日常を踏み外したような感覚がうまれます。



ハンバーガーならばバンズになりたいと言いし友あり三十年のむかし/松村正直
→「三十年」は大きな年月です。
ずっと前のことがふっと思い出されて、あれは変だったなあということ、オレにもあります。あいつは今ごろバンズみたいな大人になっているのかなあと、しみじみと思い出しているのかもしれません。



大いなる堕落ぞこれはわたしまでが賞味期限をまづ確かめて/永田和宏
→「大いなる堕落」というからどれだけひどいことをしているのかというと、賞味期限を確かめている。なーんだと思い、なんで? と思います。

食料品を買うときに、一日でも賞味期限が先のものを選ぼうとしている自分にあさましさを感じたという状況と見ました。品物を棚の奥のほうから取り出して、ひっくり返したりして。



「塔」二月号おわり。



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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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