久保茂樹『ゆきがかり』を読む  ~ぼくたちのために捨てた、ほか


久保茂樹さんの『ゆきがかり』を読みました。第一歌集。砂子屋書房。2009年7月。1ページ2首。




キッチンをピカピカにして三日ほどピカピカのまま寝込みたるかも/久保茂樹『ゆきがかり』



洋式に坐りつつ思ふ社会的漸次変化はかくのごと来む/久保茂樹『ゆきがかり』

→「かくのごと」をどう読むかで分かれるかもしれません。便器に座っていて変化してくるものということで、食事中の方がいたら申し訳ないんだけど、要するにオレはクソの出る気配のことなんだと読みました。動き出したぞ、そろそろ出そうだぞ、いよいよくるぞ、というのを便器に座ってると感じるから。



ベランダに出で来し朝のわが耳に洗濯をせよとあを空が言ふ/久保茂樹『ゆきがかり』




ひつたりと春は来るらしユンボつかふ片山土のやはきを云へり

工事終へ指示にしたがひ他所(よそ)へゆくソンも片山もけふまでのこと
/久保茂樹『ゆきがかり』

→「春の足」という連作の最初と最後を引いた。片山は二回出てくるけど、ソンは最後にしか出てこない。



他人(ひと)の死にひとは怯えて生きるゆゑわが死は誰を怯えさすらむ/久保茂樹『ゆきがかり』



わたくしのことは今日からぜつたいに歌にしないで 今朝言はれたり/久保茂樹『ゆきがかり』

→今朝言われたのに、もう歌にしている!



言葉すこし猥らにつかふだからさあとほくから見た意見だろそれ/久保茂樹『ゆきがかり』
→「だからさあ」とか「だろそれ」が「すこし猥らに」使われた言葉なのだな。これは自分が言ってるのだと読んだ。
次の歌
重箱の隅に古女(ごまめ)を追ひ詰めて正月もはや六日となりぬ
から、口論して追い詰めたんだとおもう。これは「重箱」を二つの意味でつかった歌。



いちはやくガス風呂の異常を知らせたる空気清浄器を妻は褒め止まず/久保茂樹『ゆきがかり』



はじまりはええんかいなという風(ふう)で高らかにいま笛吹ケトル/久保茂樹『ゆきがかり』

→たしかにあれって、最初だけはちょっと控えめで、たちまち全力で鳴りだす。その控えめなところが「ええんかいな」と翻訳された。巻末には著者の住所は東大阪市とある。
高らかな部分はそっち方面の言葉ではなんと言ってるのかな。
「いま」もいい。鳴ってる! はやく止めなきゃ! と思う。



ぼくたちのために捨てたとは言はぬまま捨てたのだやはりぼくたちのために/久保茂樹『ゆきがかり』
→「こまいぬさん うん」という一連から。柚子が何度もでてきて、父など家族がでてくる。
捨てたものについてはわからない。なにか事情がありそうだが、ここからは読み取れない。この歌の調子から、そこにあったものをごくおぼろげに感じるのみだ。具体を出さないことで浮かび上がってくるものがあるんじゃないか。




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2017年4月に掲載された/発表した短歌のまとめ【22首】
https://note.mu/mk7911/n/n3afc09ed83de

2017年4月にあった出来事についてあれこれ言う
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帰ってきた汚染歌人
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短歌と公募と賞金のこと|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n47a017bcce69


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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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