山下洋『オリオンの横顔』を読む  ~君の墓標を探しあぐねつ、ほか


山下洋『オリオンの横顔』。青磁社。2007年5月。第二歌集。



棄てられた砦のようだ磁気カード入れて警備を解くとき思う/山下洋『オリオンの横顔』
→完全にオレのなかでは「ICO」なんだけど、読者それぞれの「棄てられた砦」があることだろう。



推敲に苦しむ夢に目覚むればまだまっしろな原稿用紙/山下洋『オリオンの横顔』



終電や携帯電話握りしめ涙する女と隣り合う/山下洋『オリオンの横顔』



組まれゆく鉄骨が見ゆ遠からず閉じ込めらるる空間が見ゆ/山下洋『オリオンの横顔』



工藤家と彫られたる石ばかりにて君の墓標を探しあぐねつ/山下洋『オリオンの横顔』

→亡くなった工藤大悟さんという方を追って津軽に来ている「津軽に泊てむ」という一連のなかの歌。
「塔事典」を引いたら、「工藤大悟」の項目があった。京大短歌出身の塔会員で、38歳で亡くなったとある。山下さんが執筆している。

青森はほんとうに工藤が多いときく。オレも工藤をやっている。オレの父が青森で、学校の40人のクラスに工藤が10人いたと言っていた。




今日もまたテレビゲームの少年は数値化された経験を積む/山下洋『オリオンの横顔』
→「今日もまた」が効いてるんじゃないか。これがあるから時間のひろがりがでる。ゲームの中の話だけにとどまらず、今日この日の現実を生きている少年と重なってくる。



サッカーのゴールの前の水たまり今朝は凍りて陽にきらめきぬ/山下洋『オリオンの横顔』
→これは「今朝は」によって、この人はいつもその水たまりを見てるんだなーと思えてくる。毎朝見てるのかな、散歩や出勤のコースにあるのかなと。
人生のゴール、その前に水たまり、それが光ってる、みたいなことをちょっと考えてみるのもいいかもね。そういう歌なのだ、とまでは言わなくても。



水槽の魚に手を振り「ウチのこと覚えてる?」と訊く少女いて/山下洋『オリオンの横顔』



目を閉じて愛撫をしたらキュビズムが理解できるとあいつは言った/山下洋『オリオンの横顔』



屋上で烏が嗚呼と啼いたことたったひとつの今日の思い出/山下洋『オリオンの横顔』

→漢字の「嗚呼」にしたことで、感情がでた。思い出になるほどの声なのか、それくらい何もない日なのか。



恋愛シミュレーションゲームのキャラクター画帖に描きためて少年は/山下洋『オリオンの横顔』



「本質的な歌の苦労を望みたい」あなたにいただいた大切な言葉/山下洋『オリオンの横顔』

→「田中栄さんを悼む」から。さっきの工藤大悟さんもだけど、塔の歌人の思い出がでてくる。すこし前に高安さんの歌もある。



この歌集はそんな感じです。全体的によかったです。波長というのか濃度というのか、付き合いやすくてちょうどいい面白さでした。
んじゃまた。





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2017年4月に掲載された/発表した短歌のまとめ【22首】
https://note.mu/mk7911/n/n3afc09ed83de

2017年4月にあった出来事についてあれこれ言う
https://t.co/iWmOlpRjpS

帰ってきた汚染歌人
https://note.mu/mk7911/n/n3b3bdf5e932c

短歌と公募と賞金のこと|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n47a017bcce69


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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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