笹井宏之『ひとさらい』を読む  ~でてこい、なわばしご、ほか


笹井宏之さんの第一歌集『ひとさらい』を読んだ。
笹井さんの歌集を読むのは初めて。よく本屋では見かけるんだけども。オレが持ってるのは2011年の書肆侃侃房のもの。

一ページ三首の歌集にあんまり慣れてしまって、一ページに四首あるとややぎっしりと、一ページ二首だとゆったりと感じる。



初めての草むらで目を丸くして何かを思い出している猫/笹井宏之『ひとさらい』



相席の人がけむりになってます マスター、マスター おみずを/笹井宏之『ひとさらい』

笹井さんの歌の読み方に自信がない。しばしば「なぜこの言葉がここに?」という言葉が歌に含まれる。
この歌だと「けむり」がそう。代わりに体調不良をあらわすような言葉だと分かりやすくなるが、同時に台無しにもなる。
代わりなどなくて「けむり」の不思議さのまえにいなくてはならない。



天井と私のあいだを一本の各駅停車が往復する夜/笹井宏之『ひとさらい』
→これだったら「天井」「私」のところに、「東京」「大阪」などと二つの離れた駅名・地名をいれればなんでもなくなる。なんでもないものにしてもしょうがないんだが、そういうことをしたくなる。
でもここは「天井」「私」だ。この歌では天井と私がとても離れている。自分の部屋の距離感が狂いだす。

今ちょうど、嘘のようにオレの部屋の天井から蜘蛛が降りてきた。こいつは夜毎に上下に往復しているのだろう。ちょうどいいが、ちょうどよさで埋めてしまうのもためらわれる。



ゆるせないタイプは〈なわばしご〉だと分かっている でてこい、なわばしご/笹井宏之『ひとさらい』
→急に「ゆるせない」「でてこい」などと強い調子になるので気になる歌だ。
なわばしごのどこが許せないんだろうと考える。アニメなんかだと、悪者をやっと追い詰めたと思うとヘリコプターがきて縄梯子を垂らして、悪者を乗せて逃げてしまう。

映像じゃなくてオレ自身の経験でいうと、なわばしごはグラグラして頼りなくて不安になるものだ。心もとない。小さい頃になにかのアスレチックで、なわばしごが怖くて降りられずに泣いたことがある。

「でてこい、なわばしご」の強気な態度からすると、前者に寄せていきたくなる。




にぎりしめる手の、ほそい手の、ああひとがすべて子どもであった日の手の/笹井宏之『ひとさらい』
→ひとがすべて子どもであった日っていつのことだろう。すごく昔にそういう時代があったのかもしれないし、なかったかもしれない。
この手はなんだろう。「にぎりしめる」「ほそい」手とは。なにか神様っぽいものや、母性っぽいものを想像した。ひとが伸ばしてる手か、ひとに対してさしだされた手か。



だんだんと青みがかってゆくひとの記憶を ゆっ と片手でつかむ/笹井宏之『ひとさらい』
→景色を見ていると、遠くにあるものは青みがかって見えるものだ。「青みがかってゆく」を、はるかに遠のいてゆくようなイメージで読んだ。「青みがかってゆく」がかかるのは「ひと」なのか「ひとの記憶」なのかでちょつと変わってくる。
「片手でつかむ」がその大きさをあらわす。意外と小さいんだな。また、手を伸ばす様子が見えるようだし、両手じゃないからまた逃げられてしまいそうな感じもちょっと受けた。

一字空けをはさんだ「ゆっ」は、つかもうとした手が空間をワープするようなイメージで読んだ。



ぼろぼろのアコーディオンになりはててしまった天国行きの幌馬車/笹井宏之『ひとさらい』
→幌馬車ってナマではたぶん見たことないが、屋根のところがアコーディオン的になってたと思う。後で確認するけども。
「ぼろぼろ」「なりはてて」に、無惨ないたましいものがある。
楽器のアコーディオンに変わったという意味だろうか? そこまでは読んでなかった。

かつて行けた天国へ行けなくなったんだとすると、それは悲しいことだ。なんでぼろぼろになったんだろう。長い年月が経って老朽化したんだろうか。

画像検索してみたら、思ってたやつと違ったが、アコーディオン的ではある。日本にはあんまりなさそう。



いつにもまして、おぼつかない感じで読んだ。この本おわり。
んじゃまた。




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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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