永田淳『1/125秒』を読む  ~ただ手に車体押しおり、ほか


永田淳さんの第一歌集『1/125秒』を読んだ。ふらんす堂。2008年12月。



横断歩道渡りて煙吐き出せば同時進行の前世もあるべし/永田淳『1/125秒』



ツンツンと三角山の数多ある明朝体よ夜明けの気配/永田淳『1/125秒』

→明朝体にはたしかに三角の部分がたくさんある。そこに着目した歌。「三角山」としたことで、山から日がのぼる「夜明け」のイメージがみちびかれる。「明朝体」のなかにも朝の字がふくまれている。



ブラキオサウルスの首の長さを思いおり寝違えし痛み昼まで続く/永田淳『1/125秒』
→寝違えた痛みが昼までつづくというのは長い。この長さはブラキオサウルスの首の長さにかかってきて、さらに恐竜の時代へのはるかな時間の長さにもつながっていく。
ブラキオサウルスも寝違えるのかなあ。



ラジコンの電池のなくなりしこと子は言わずただ手に車体押しおり/永田淳『1/125秒』
→言いたいことを言えずにあきらめてしまう子なのかな。その胸中を思うとわびしくなる。
三句が「しこと子は」となるのがやや気になるが、歌集全体に五七五七七におさまらない歌、ごつごつした歌がいくらか見られる。



耳垢を取りやりし時子の耳朶に一筋に見ゆ青き静脈/永田淳『1/125秒』



少女等の背後の空気を歩みおり地下鉄を降り階段までを/永田淳『1/125秒』



真剣に遊ぶ楽しさ子に説けり飛車角抜きの盤を挟みて/永田淳『1/125秒』

→オレもそういうことを言われた記憶があるなあ。飛車角抜きだから、じゃあナメてるのか、真剣にやってないかというとそういうことではないんだよね。持ってる駒で真剣にやるというだけの話で。



わが屋根に鵺よ来て啼け叶うならわが頭上にて求愛をせよ/永田淳『1/125秒』



遮断機を愛するごとく人々の集まりて見ゆ日輪の下/永田淳『1/125秒』





歌はそんなところです。うまいけど大人しい歌集だ。
最後の方の、子供を産むかどうかというところがひとつのクライマックスだろうけども、胸に迫るというよりは「クリスマスツリーの電源を抜く」は巧いな、というのが感想。


全体に大人しいから、鵺が求愛する歌みたいな身ぶりの大きい歌を見かけると丸をつけたくなる。

この本おわり。




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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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