梶原さい子『あふむけ』を読む  ~あの青年は誰にも似てゐる、ほか


梶原さい子さんの第二歌集『あふむけ』を読んだ。
2009年8月。砂子屋書房。



彼女らの生くる生計(たつき)をわたくしは研修と呼ぶよき経験と/梶原さい子『あふむけ』
→「饂飩工場の工員われは」という歌がすこし前にある。
仕事によってはこういうことはある。あるひとには通過点であるものが、別の人にはそうではない。



似顔絵はきのふもけふも黒板の隅でなんやら半笑ひなる/梶原さい子『あふむけ』
→学校の黒板に書かれたものは、わりとすぐ消されてしまうものだ。ふざけた絵は特に、見つけられ次第消されてしまいやすい。半笑いの似顔絵なのに、よく残っている。
「なんやら」もいいな。



まづ腕をさりさり洗ふ少女期より変はることなき明快さなり/梶原さい子『あふむけ』



縄跳びの紐が地面と逢ふときの激しさ思ふ火花のやうな/梶原さい子『あふむけ』



あをみどりとみどりあをほど違ひたるふたり遠くの雨やまざりき/梶原さい子『あふむけ』

→似ているが同じではない色。これがやまない雨につながることで、ちょっとの違いがふたりを悲しいことにしたのかと想像する。
『ざらめ』の時に「一点透視図法」の歌を引いたけど、青緑と緑青も美術の授業で聞いたのを思い出す。



人を刺すときの力を思ひたりあの青年は誰にも似てゐる/梶原さい子『あふむけ』
→特定の事件を指しているのか。だが、誰にも似ている加害者が置かれることで普遍性が出てくる。人を刺しても、誰にも似ていない自分になどなれはしない。



この歌集の「Ⅲ」は手術とその前後を描いている。つらい歌がならぶ。

気がつけば待合室に座りをり誰からもひどく遠いところに/梶原さい子『あふむけ』

お見舞ひのプリンを掬ふ透明な匙 平たさをかなしみにけり/梶原さい子『あふむけ』



あやとりで作りし橋を渡りませうその真ん中を陽を受けながら/梶原さい子『あふむけ』

→これが特に印象的だった。あやとりでできたものはみんな隙間だらけだけど、だからこそいっぱいに隅々まで陽を受けられるなあと。精一杯の前向きさとして読んだ。



想ひ出を作りたかつた 母親と変なかたちの岩を見にゆく/梶原さい子『あふむけ』



この歌集おわり。

第一歌集『ざらめ』の感想はこちら。
梶原さい子『ざらめ』を読む  ~窓が多すぎる、ほか http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52189860.html

第三歌集『リアス/椿』の感想はこちら。
梶原さい子『リアス/椿』を読む ~風まみれの風の中なる人々、ほか http://t.co/4tPY2HQgcu

梶原さい子『リアス/椿』をふたたび読む  ~憧れありてそよぎてゐたり、ほか
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52125933.html





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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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