角川「短歌」2017年3月号を読む  ~諦めてからが本番、ほか

角川「短歌」2017年3月号。



時といふ見えざる幕を押し分けてゆく力あるうちが命ぞ/蒔田さくら子「鳥瞰」



地球にそそぐひかりをぜんぶあつめても生きかへらざるたつたひとりが/渡辺松男「夕枯野」

→なんというまばゆさだろう。そしてなんと死とは重い暗いものだろう。



諦めてからが本番みたいなところあるよねと言う ないかなと言う/辻聡之
→特集「青春と短歌」から。
大胆なことを言いたいけど、相手の同意がほしいし否定されたくもないんだな。わかる。「本番」についての考えを突き詰めきれてない感じが青春かと思った。

寺井龍哉さんの「それにも心いたまむとしき」の話がよかった。
そういうのを聞くと得した気分になる。みんなどうやって乗り越えてるんだろうと思うもん。




目つぶしにあふがごとくに父母の思ひ出多しせまきこの世に/大橋智恵子「記念日」
→考えさせる比喩だ。思い出は目の前を見えなくするという意味で「目つぶし」なのかな。


枝豆の豆みっしりと太りいてその夜(よ)怒りのごとき一皿/加藤英彦「母の昭和」

免罪符買った粉屋のおかみさんのように募金の領収書もらう/松村由利子「中世の闇」

ごとくに、ごとき、ように。気がつけば比喩の歌に多く丸をつけていた。
枝豆の歌。枝豆がなにを怒るのか、そう思える人間のうちに怒りがあるのか。
免罪符の歌。「粉屋のおかみさん」が見事だ。



カーディガンのまるい背中に射していた薄日も消えて授業は終わる/千葉聡「キットカット」



飛行機より星の光の強ければ星の後ろを飛行機がゆく/花山周子

→連載から。他の星より高くまで飛行機は飛ばないが、光の強さが距離の近さに見える。
夜空を見ている気分になる。



不発弾と同い年なり爆弾のとびかふ時にわれら生まれて/中野昭子『窓に寄る』



「全国結社・歌誌動向」に、オレがここで紹介したことのある「群山」がでていた。
「少しでも新たな歌材や歌境に挑戦して若々しい作品を投稿し、分かりやすく若い人にも受け入れやすい作歌に力を入れています」におどろいた。そういうことを拒否しているからああなるんだとばかり思っていた。



どうせまたいっとき流行るはかなさに「PPAP」使い回さる/天野美奈子
→題詠「林檎」を詠う、より。たしかにPPAPのAはりんごだ。こういう題の使い方があるのかと感心した。
内容はあれだけども。流行を使い回してるのはこの歌も同じことだ。「どうせまた」って言うけど、いつまでも流行っていてほしいのかなあ。いっときでたくさんだけどな。



というわけでこの本はおわり。
オレは角川歌壇に佳作2首と秀逸1首、題詠で1首、角川全国短歌大会の佳作に1首載った。
久々湊盈子さんの選による「題詠・林檎を詠う」は一番前に載ったのでよかった。

りんごの上にリンゴを置いてそのうえに林檎を乗せたぐらい不安だ/工藤吉生


んじゃまた。




▼▼▼



「やめたい」と書きたい|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/na34b71807522

抜け出したいという話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n3e29a2c9d9c3

成人病予防健診に行って、最悪だった話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n825cec319cde

2017年2月の工藤吉生の短歌すべて見せます|mk7911|note(ノート)

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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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