「現代短歌」2017年3月号を読む  ~おほほいひひひぽけぽけぽ、ほか


現代短歌 2017年3月号。一ヶ月遅れでやっていきます。



同名短歌ユニット「太朗」の二人五十首というのがあるけど、正直どう受け止めていいのかわからない。新しいことをやってるわけだけど、オレは古い読み方しかできなかった。

まず「Desserts 染野太朗」とあるので、染野さんの連作だと思って連作を読むわけです。職探ししたり仕事したりする連作で、おもしろく読んで印つけたりするわけです。読み終わると6ページから11ページまでとばされる。
字がさかさまなので本もさかさまにして読んだ。自分は今さかさまの本を読んでるぞと思うとすこし楽しい。

「Stressed 吉岡太朗」とある。今度は吉岡さんだなと思って読みはじめると、染野さんの連作と同じ歌が順序を逆にして置かれている。

おもしろかったけど二回も読まなくていいやと思って二度目は軽く流して終わりにした。
おそらくどれかが染野さんの歌で他のどれかが吉岡さんの歌なんだけど、ひとつの歌の作者がはっきりしないのはなんか居心地悪いな。だって、署名と歌が一致しないでしょう。偶然同じ歌からなる連作を二人が同時につくるわけないんだから、染野さんのつくった歌が吉岡さんの名前で出てたり、その逆になってるわけでしょ。
連作はそれぞれ別のタイトルで別の署名になっていて、それもややこしい。合作であると同時にそれぞれの作品でもある。かなり入り組んだことになっている。考えるほどこんがらかる。

作者と作品の関係を揺るがすということで「洞田」につながってるんだろう。
音楽なら逆再生で別の曲になるかもしれない、絵画を逆さにすれば別の絵かもしれない。短歌の連作はどうだろう? ってことじゃないかな。
同じ50首連作を続けて読むのはしんどい。吉岡さんのが本の最後についてたらあるいは違ったかもしれないね。





「十首でわかる短歌史」
おもしろかった。恩田さんがとばした古今和歌集を、つぎの島内さんがしっかり大きく取り上げるところなど、スリリングだ。

吉田隼人さんの
「寺山は『月蝕機関説』で短歌と天皇制の関係に触れていますが、戦後短歌につきまとう人間像を彼が撃とうとしたのは、それが「人間宣言」をした天皇ヒロヒトの影法師だと見抜いていたからかも知れません」
っていう一文を、何度も何度も読み返した。



夜の卓にラ・フランスは自らの影の歪(いびつ)を見つめいるなり/三井修「芝浜」



着ぐるみの内側のよう起きたてのさまよいたての娘の皮膚は/東直子「金網とスカート」



朝がきて次期大統領映りをり この人を見ない権利がない/米川千嘉子



百五歳と記されてある投稿歌しばし眺めて最後には捨つ/道浦母都子

→渡辺つぎさんのことだろう。オレは投稿しはじめた2012年ごろからずっとこの人が自分の年齢を詠み込んだ歌で入選入賞するのを角川「短歌」で見てきている。最近も「百五年生きていること不思議なり預かりものの体のごとし」という歌で角川全国短歌大賞奨励賞をとっている。
長生きはすごいけど、自分の年齢のはいった歌ばかり発表してくる姿勢には疑問をもっている。だから、申し訳ないけども「捨つ」に愉快を感じてしまった。



「せんさうはなかつたことにしてください」おほほいひひひぽけぽけぽ/久保田登「月と金星」
→笑いすぎておかしくなってしまったのだろうか? 上の句のようなことを言う人間の愚かさを下の句で描写したのだと読んだ。



保険屋のセールスマンを家に上げしばし懇談す死亡一千万/小池光「赤い実」
→「懇談」というと親しげだ。辞書にも「うちとけて話し合うこと」とある。だが「死亡一千万」という要点がごろんと投げ出されている。いくらうちとけても、死と金の問題が目の前にある。



ドイツ語は気むづかしいから薔薇の名もペーターフランケンフェルトといへり/今野寿美「お祓ひ」



路に触れ消えゆく雪と見ていしが白き厚みをもちはじめたり/吉川宏志「雪とアレント」

→雪が積もりはじめる瞬間という、じつに細かい瞬間をとらえている。
作者の名前を見ると、これが政治的な問題のことのようにも見えてくる。



樹のごときひとのひとりを思ひをりけさ美しき鳥を見しゆゑ/大辻隆弘「デューレルの犬」
→美しい鳥がとまる樹ならば、きっとそれにふさわしい樹なのだろうと想像したくなる。

連作タイトルのデューレルとは、「未来」の表紙のデューラーだろう。








読者歌壇にはオレの歌が「秀作」で載っている。

アンケートの「わからない」にだけ丸つけてオレも日本国民である/工藤吉生



以上です。







抜け出したいという話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n3e29a2c9d9c3

成人病予防健診に行って、最悪だった話|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n825cec319cde

2017年2月の工藤吉生の短歌すべて見せます|mk7911|note(ノート)

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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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