斎藤茂吉『あらたま』を読む  ~ほのりほのりとゐる我、ほか





歌集。斎藤茂吉の『あらたま』。
講談社の「日本現代文学全集51」で読んだ。何回か書いてるけど、この本は七冊の歌集が抜粋でなくちゃんと収録されている。




むらぎものみだれし心澄みゆかむ豚の子を道にいぢめ居たれば/斎藤茂吉『あらたま』
→「むらぎもの」は「心」にかかる枕詞だそうで、茂吉の歌には時々でてくる。



ほうつとして電車をおりし現身(うつしみ)の我の眉間(みけん)に雪ふりしきる/斎藤茂吉『あらたま』



うつつなるわらべ専念(せんねん)あそぶこえ巖(いは)の陰よりのびあがり見つ/斎藤茂吉『あらたま』

→「わらべ専念あそぶこえ」は変わった言い回しだ。子供が遊びに専念している声。子供と自分を「巖」が隔てている。



あきらめに色なありそとぬば玉の小夜(さよ)なかにして目ざめかなしむ/斎藤茂吉『あらたま』




目のまへの電燈の球(たま)を見つめたり球ふるひつつ地震(なゐ)ゆりかへる/斎藤茂吉『あらたま』

→昔の人も地震があると上を見てたんだなーと思う。地震は電球をゆらしている、それは確かだ。目の前のものへの集中ぶりに見るものがある。



いのちをはりて眼(まなこ)をとぢし祖母(おほはは)の足にかすかなる皸(ひび)のさびしさ/斎藤茂吉『あらたま』



晝床にほのりほのりとゐる我の出で入る息のおとの幽(かそ)けさ/斎藤茂吉『あらたま』

→こういう歌を見ると、ただものじゃないなって感じる。
静かだなーっていう短歌はいろいろあってオレは好きなんだけど、ここで聞いてるのは自分の呼吸の音だ。あまりにも身近すぎて気づかないようなところだ。「ほのりほのり」は布団のなかで半分起きてて半分寝ているような気持ちいい状態なのだろう。おもしろい。



火口よりとほぞきしときあかあかと鋭き山はあらはれにけり/斎藤茂吉『あらたま』



をさなごは眠りてゐたりしまらくはねむれとおもふわがひたごころ/斎藤茂吉『あらたま』



をさなごの去りたるあとに散らばれるものを見つめてしまし我が居り/斎藤茂吉『あらたま』



いにしへの碓氷峠(うすひたうげ)ののぼり路(じ)にわれを恐れて飛ぶ小鳥(こどり)あり/斎藤茂吉『あらたま』


茂吉にはよく「我(われ)」が出てくる。子供の歌にも「我」だし、峠をのぼってても「我」だ。そこをおもしろく思っている。

「うつしみ」とか「うつつ」とかもよく出てくるけども、この世に自分がいるっていうことが茂吉にとっての感動のもとなのかしらん。

この歌集おわり。







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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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