「短歌人」2017年1月号を読む  ~電車の手すりぺろりなめたり、ほか

最近は、よその結社誌を読むのがおもしろくなってるんだけど、その流れで

「短歌人」2017年1月号

を読んだので感想を書いていきます。



誌面を見ると、「短歌人」は四つの欄にわかれている。同人1・2、会員1・2。ざっと数えると、139人、100人、94人、99人となっていてバランスがよい。顔ぶれやなんかから察するに、同人は会員の上に位置している(オレの知ってるところだと「川柳 杜人」という川柳誌もそうなっている)。


「短歌人」は400人超が出詠していて128ページある。全部まともに読むと長時間かかる。よく知らない結社誌同人誌をあまり長時間かけずに見渡したいという場合はどうしたらいいのか。
オレのやり方は、まず知ってる人の歌を見る。それから評やアンソロジーのページを見て、そこで気になる歌があったらその作者のいるページを探して読む、というふうにしている。





ポケットのなき服不安と思いつつ出でて帰りて何事もなし/古本史子
最初に題詠がある。「ポケット」で数人が8首ずつ出している。「ポケット」で8首ってなかなか難しいと思うんだけど、それぞれ面白かった。



本能をよみがへらせて幼きが電車の手すりぺろりなめたり/中地俊夫「大きな便器」
→おもしろいけど、ちょっとこわいとも思った。人間のなかにある本能ていうのは、電車のなかとかで突然よみがえっちゃったりするのかなと。手すりなめるくらいの本能ならばいいけれども。でも手すりなんて、おいしそうに見えるわけないし、本能ってなんだろなと。
「手すり」「ぺろり」「なめたり」の「り」の効果もある。


ほどほどに清き流れの街川に六羽の鴨はなにか啄む/大橋弘志「秋の声」
→もっと綺麗になりそうなところを「ほどほどに」と抑制している。六羽というところまでは数えられるけど、ついばんでいるのが何なのかまでは見えない、そういう距離感。



燃え上がっているなら消せばいいじゃない通りすがりの誰かが言いぬ/津和歌子「昔話」



弾き慣れた楽器のやうにレジを打つ喉を痛めぬ節回しにて/春野りりん「焼きそば当番」

→レジはオレも打ってたことがあるけど、楽器とまではいかなかったな。熟練している。接客の声は「節回し」になり、さらに音楽的になっている。



1月号は「短歌人賞」が発表されていた。応募者が42人。
ここは塔や未来のちょうど半分くらいの会員数とページ数だが、結社賞の応募者も半分くらいだ。

石鹸でよくよく洗ふ生きてゐるだけで汚れてしまふからだを/大室ゆらぎ「夏野」

車椅子回れ右させ本日の主役の雪を眺めてもらう/西川才象「存在と時間」


受賞作ふたつから引いた。




精一杯過ごしたれども三行の日記を満たすほどにはあらず/森敏子



誕生日同じ季節にいつも来て義父に半袖のパジャマ増えゆく/犬伏峰子

→夏が誕生日なのでしょう。でも、夏だからってすぐに半袖のパジャマということにはならないはずだ。
贈り物って相手の使いそうなものを贈るわけで、そのひとの置かれた状況によってはパジャマが多く贈られるということになってくるのかなあと。
プレゼントによってその人の姿が読者の中でたちあがってくる。



夕やみに佇む人とおもひしがふと門柱になつてしまひぬ/鈴木秋馬



一体となって眠れる海空(うみそら)を今日もわかちて夜明けとなりぬ/蒼あざみ

→映像が浮かんだ。真っ暗なところから、だんだん明るくなって一面の海と一面の空になる映像が浮かんだ。



優しさは傷つきやすさでもあると気付いて、ずっと水の聖歌隊/笹川諒
→理屈っぽい歌なのかと思っているとあざやかに詩へと飛躍する。これはちょっとすごいな。




三角點という、自由な文章の載るコーナーがある。
そこで大越泉さんという方が、自ら歌人と名乗る者がインターネットで料金の発生する短歌講座をひらいているがそれは短歌をなめてるんじゃないか云々と書いているけど、これって「枡野浩一短歌塾」のことなのかなあ。考えすぎかなあ。モヤモヤした。
オレはその短歌講座の塾生でこそないけれども、すこーしだけ関わっているんですよ。

塔に「方舟」っていう、やはり自由な文章を寄せる欄があるけど、オレはそこでは相手が誰かをはっきりさせて意見を書いた。誌面でなにか批判するならゴニョゴニョしないで相手をはっきりさせたらいいのにって思うね。
エアリプはツイッターだけでたくさんだ。



天野慶さんが時評を書いている。
ツイッター、うたつかい、うたらば、ネプリ。そういう言葉を結社誌や総合誌で見ることも珍しくなくなってきたものだなあと思った。
「回収」という言葉に力を入れて、結社誌の役割を問う内容になっている。

ネット発のそういう場所と結社でなにがちがうかって言ったら、まずは層が違う。
NHK短歌テキスト3月号で、ツイッターには奥村晃作さんもいるって書いてるけど、奥村さんは数少ない例で、ほとんどの七十代八十代の歌人はツイッターやってないし見てない。
オレがネットで満足しないで結社にもでてきたのは、もっと広がりたいからなんです。
でもその話を始めるときりがないから終わりにする。
今後も時評は追いかけていきたい。



文字組が纏足みたいになってる(字数の多い歌の文字が途中で小さくなる)っていうのを以前聞いたことがあったけど、もう今はそういうことはなかった。


以上です。



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角川短歌賞予選通過作品「ピンクの壁」50首をnoteで公開しています。400円。
https://t.co/TmwsRvt0p9
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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