あまねそう『2月31日の空』を読む  ~呼吸器をはずしたような静けさ、ほか

「かばん」に所属するあまねそうさんの歌集「2月31日の空」をKindleで読みました。2013年に出た歌集。



てつぼうに手のとどかない子のために広がっている青空がある/あまねそう『2月31日の空』
というのが巻頭の歌です。鉄棒に手が届かないということはだいぶ小さい子です。鉄棒をやってみたいという気持ちで見上げてるのでしょう。そんな子のために空が広がっている。空がこの子を見守っているようで、あたたかい歌のように見えます。

ですがこの歌集はどちらかというと、学校にいるのがいやでたまらないような生徒の歌が多いです。あとがきを読むとわかりますが、学校の歌が多いとはいっても学生が作ったわけではありません。



引っかけたハードル戻し僕はただただ牧場の馬になりたい/あまねそう『2月31日の空』
→そういえば授業でハードル走をやったことがあります。ひっかけるとハードルが倒れます。倒れたままではいけないので、次に走る人のために戻したりします。失敗して、その後始末をする。
馬ならばそんなことはせずに走って跳べるわけで、そんな馬になりたいという歌。野の馬ではなく牧場の馬というのはポイントかもしれませんね。
三句から四句に「ただ」がまたがっています。これがハードルをまたぐことと重なっているのかいないのかはわかりませんが、この「ただただ」が願望を強くしています。



「注目~」と言う先生の手のひらの小指が君の耳でかくれる/あまねそう『2月31日の空』
学校がいやだという歌がたくさんあるのですが、それはなるべく拾いませんでした。さっきはハードル走をいやがる歌がありましたが。給食が食べられないとか、先生やほかの生徒を皮肉っぽく見てたり、とても生きづらそうです。
この小指の歌は、席で授業を受けてる時の感覚が思い出されてよかったです。映像が浮かびます。



呼吸器をはずしたような静けさにときはなたれて海は金色/あまねそう『2月31日の空』
→危うい比喩で、とてもいいです。死へ向かっていくような静けさであり、海の金色です。
映画「ヴェニスに死す」のことを思い出したりしました。



人類の得てきたどんな権利より優先されるおばちゃんのチャリ/あまねそう『2月31日の空』
→一方でこういう皮肉の歌はあまりよくない。なんでこれに注目したかというと、短歌を作りはじめたばっかりのころのオレの作りそうな短歌だったから。あっ五年前のオレじゃんと思って。
遠い大きなところから近くのものにしぼっておかしみを出そうとする手つき。


若さとはアコムのティッシュもらえずに疎外されたと思える心/あまねそう『2月31日の空』
→これも似た感じだけど、「アコム」がよかった。消費者金融。「おばちゃんのチャリ」よりよほどしっかり絞りこんでいる。



降りてみればいよいよレトロなる気分 東京メトロ田原町(たわらまち)駅/あまねそう『2月31日の空』
→「田原町駅」から発想したんだろうな。よくできている。「東急」に「東京」をあててるし。「メトロ」に「レトロ」をひっかけてみたり。
大きければいよい豊かなる気分東急ハンズの買物袋/俵万智




「一身上の都合」と記す本当は「お前のせいだ」と書きたいところ/あまねそう『2月31日の空』




歌は以上です。

幼さがあらわれている部分は苦手でした。この人はいつ大人になるんだろうと思って読みました。自分の昔を思い出すようなところもありましたが、身に覚えがあっても共感が少ないのはなぜなんだろうと思いながら読みました。
あとがきを見れば幼さにはある程度納得がいきます。
あとがきに「作為」という言葉がでてきます。「作為」という言葉をおそらく「創意」みたいな意味で繰り返して使っていますが、あまりいい言葉ではないのではないかと思ってつまずきました。

作為とは
『あることに見せかけようと,わざと人の手を加え手直しをすること。ことさらに手を加えること。つくりごと。 「 -の跡が残る」 「 -を施す」』(Weblo辞書)
といった言葉で、やはりあまりいい意味ではなさそうです。

歌集にあらわれているのが作者本人だとは思われたくないという気持ちがにじみでた「あとがき」でした。



Kindleで歌集が読めるというのはいいですね。無料ならばなおさら。こういう歌集もあるんだなと、一つ知りました。
終わります。






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一月にやったアプリ、見た漫画・映画・動画まとめ|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n49a7445301ba
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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