保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』メモ


保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』

草思社。1400円。2003年。220ページ。


いつものように抜粋。数字はページ数。


12
小説とは、“個”が立ち上がるものだということだ。べつな言い方をすれば、社会化されている人間のなかにある社会化されていない部分をいかに言語化するかということで、その社会化されていない部分は、普段の生活ではマイナスになったり、他人からは怪訝な顔をされたりするもののことだけれど、小説には絶対に欠かせない。。つまり、小説とは人間に対する圧倒的な肯定なのだ。

(「社会化されていない部分」に傍点。これは短歌でも穂村さんが似たことを言っている。)



13
思い出させることは小説だけでなく、すべての表現の力だ。思い出すこと、忘れないこと、見えなかったものを見えるようにすることには、それだけで意味があるはずだと私は思う。


20
そもそもの話、べつに私が書かなくても、すでに小説はあるわけで、その上で、いったい私は何を書けばいいのかという疑問もわいてくる(こういう疑問というか“ためらい”はとても大事で、そこをその人なりにクリアしないと、小説を書きつづけていくことはできないと思う)。


28
小説を書こうとしている人やすでに何作か書いたことのある人が、よく私にテクニック面での質問をしてくるけれど、そういうとき私は「あなたが技術や手法について誰かに訊くたびに小説はあなたから離れていく」と答えることにしている。

29
「テクニックなんか関係ない」と言いながら、嫌でも出てきてしまうのがテクニックというものの落とし穴で、テクニックから自由になることのほうがよっぽど難しい。


31
最初の一作のために全力を注ぎ込んだ人には、二作目がある。しかし、力を出し惜しんで、第一作を書きながら二作目のネタを残しておいた人には、二作目どころか第一作すらない。

全力で小説を書くことで、その人が成長するからだ。



33
本当の意味の「新人」というのは、小説の世界に何か新しいことを持ち込めた人のことだ。


71
ここで言う「技量」というのは、単純な「技術」「テクニック」のことではなく、書こうとすることが思いどおりに書けなくても簡単に投げ出さないで、それに辛抱強く労力や時間を費やしつづけることができるようになるということだ。


87
小学校の頃を思い出してみれば、先生からほめられて喜ばない子どもは一人もいなかったはずだ。ほめられて喜ぶということは、大げさに言えば「善に向かって成長したい」「善を志向している」ということで、それは大人になっても心の底では変わらずにある。


163
まだ小説家としてデビューしていない読者のみなさんは、今のあなたたちのやり方をしていて自分の小説が商業誌に掲載されましたか? せっかく書いたんだからと、自分の書いたものを大事にしていて、それが商業出版に結びつきましたか?
自分の書いたものをせっかく書いたんだからという気持ちでかわいがっていてはダメなのです。小説家となって小説を書きつづけるのだとしたら、一〇〇枚や二〇〇枚の原稿ぐらいいくらでも書けると思えなければダメなのです。

(「せっかく書いたんだから」に傍点。ここは特に耳が痛い。身に覚えがる。)



192
テクニックというのは自分を助けるものではなく、自分を別の次元に連れていくものだと理解する必要があり、その観点でのみテクニックは意味がある。テクニックを身につけると作業が簡単になるというのは、根本的に誤解した芸術観(表現観)だ。


209
手書きの場合、書いていて「これはつまらないな」ということに早く気がつく。手書きというのは、やはり、“労働”で、いまやってる仕事の実感が直接伝わる。“労働”という意味で手書きはたしかに大変なのだが、大変なだけに、書いていることが面白くないと続けられなくなるのだ。


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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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