伊舎堂仁「奥歯」を読む  ~工藤吉生さん!な伊舎堂、ほか


歌壇賞はだめだったんだけど、現代短歌の読者歌壇は特選をもらった。

あと、その「現代短歌」2月号では、オレをツイッターでブロックしたりブロックはずしたりまたブロックしたりしてる伊舎堂仁さんが、工藤吉生の出てくる歌を詠んでいた。


うれしいことです。誰かに詠まれたいっていう願望があったんです。


けっこう痛いところ突いてくれていた。痛いところを突けるのは、ちゃんと見て考えてくれてるってことだからうれしい。


伊舎堂仁さんの一首に自分の名前を見つけてから、歌壇賞落選も読者歌壇特選も薄い出来事となった。ずっと「工藤吉生さん!な」について考えていた。
「現代短歌」2017年2月号の伊舎堂仁さんの7首連作の2首目にオレの名前がある。


まだ今も島にいるならば工藤吉生さん!な伊舎堂だろう/伊舎堂仁「奥歯」


島にいるならば工藤吉生さん!だけど、もう今は島にいないから伊舎堂さんは工藤吉生さん!な状態ではない。

どんな状態か。



この7首連作は4首目を中心に左右対称的になっている。
これは人間の歯の形を思わせる。だとすると4首目が前歯で、1首目7首目が奥歯にあたる。タイトルから1首目の詞書へとつながるが、これは奥歯が歯列からはみ出して生えているようだ。

工藤吉生の出てくる2首目には6首目が対応している。

6首目には朗読イベントから歌集批評会後の懇親会へハシゴしたことや人前ですべったことが詞書に書かれていて、東京で短歌をしている伊舎堂さんが詠まれている。


東京で短歌をしてる伊舎堂は日本会議っぽいと思った/伊舎堂仁「奥歯」


この6首目にはイベントに対して積極的な伊舎堂さんが描かれていて、それに対応する、さっき引いた2首目には今も島にいる伊舎堂さんが描かれている。東京の歌と、地方の歌だ。
6首目との関連で見れば2首目の「工藤吉生さん!な」は、イベントにも出てこなければ地方から移動することもない歌人の姿である。

それはさっきも言ったように、まったく痛いところを突いている。

関東や関西イベント盛り上がり遠い東北に歌書読むオレは
と詠んだこともあるオレは、インターネットと投稿欄の歌人だ。それはけっこう気にしていて、集まって楽しそうにしてる歌人たちを遠くから僻んでいたこともある。

地方にいるのがダメで東京にいれば良いという単純な話ではない。
6首目には「日本会議っぽい」とある。いろんな人に顔を覚えてもらったり、(伊舎堂さんがやってるかは知らないが)名刺交換かそれに類することをしている様が、まるで水面下での根回し・政治活動のようだという、そういう意味だろう。
日本会議はあまり報道されることはないが日本政府を牛耳っていると言われる。日本会議にはよからぬあやしげなイメージもあるが、そのあたり、自身を肯定しきれないものがあるのだろうか。


工藤吉生みたいにしてれば人前ですべることはない。だが伊舎堂さんはすべるリスクを負って人前に立つ。そこにオレは劣等感がある。
歌は投稿欄、発言はインターネット。そこから出ずにいる、行き詰まった歌人の姿が「工藤吉生さん!な」に集約されているのかなあ。


オレの記憶が正しければ、
伊舎堂さんは沖縄じゃなくなり、
木下さんは山口じゃなくなり、
ユキノさんは新潟じゃなくなり、
まともさんは山形じゃなくなった。
猫丘さん、わごむさんも宮城から離れた。
理由はそれぞれいろいろだけれども。そういう人達のことをオレは気にしている。


「僻地」と「僻む」の字が同じなのに気づいた。



オレは虫歯が多くて今も偶然ちょうど歯のことを気にしているので、そういうところも引っ掛かる。

4首目には「ドアノブをなめてたようなやつ」が出てくる。「ドアノブ少女」っていうのが流行ったのを覚えている。




それにしてもオレの知ってる「オレ」と他人から見た「工藤吉生さん」は違うんだろうな。
オレは「工藤吉生」がいろいろ見えすぎる。


東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく/工藤吉生
〈2016.6 未来〉



水槽のなかで太りすぎた亀みたいな自分だと、思うときもある。自分が「前進」だと思ったものは、水槽のなかで余計にエサを頬張っただけのことなのかもしれないと。
歌集は無理そうだし新人賞は厳しい。ずっとこうしているんだろうかとたびたび思う。
虫歯が痛くなってもちょっとやそっとでは歯医者に行かずに済まそうとするオレが、果たして現状を打破できるのか、それはすこぶるあやしい。オレはこのまま東北にいて「工藤吉生さん!な」工藤であり続けるだろう。



ブロックされたり解除されたりって最初に書いたけども、まあそれは余計なことで「そういうところだぞ」って言われるのかもしれないな。でも、オレと伊舎堂さんの単純じゃないところを言いたくて言ったことです。
こうして思い出してくださるっていうのはうれしいですね。



ツイッターのリプライは届きませんからここに普通に書きますが、ありがとうございました。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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