「短歌ホリック 1号」を読む  ~しゃぼん玉追跡人、ほか


短歌ホリック1号。



荻原裕幸さんとそのほか名古屋周辺の方たちによる同人誌です。特集1の現代百人一首については以前書きました。

現代百人一首をつくったぞ!!!!! : ▼存在しない何かへの憧れ http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52180493.html


それ以外のところをやります。



貘になつた夢から覚めてあのひとの夢の舌ざはりがのこる春/荻原裕幸「不断淡彩系」
→貘は夢を食べる動物と言いますが、夢で貘になって、夢のなかでひとの夢を食べるということをしています。入れ子細工ってやつです。「舌ざはり」がそれをただの夢に終わらせません。
「春」からは「春眠暁をおぼえず」を連想しました。



ここはしづかな夏の外側てのひらに小鳥をのせるやうな頬杖/荻原裕幸「不断淡彩系」
→夏の外側、は他の季節ではなくてやっぱり夏のような気がします。涼しい透明な部屋を想像しました。
頬杖では手が顔を支えますが、小鳥は小さく軽くて、この頬杖は少女のものかと思いました。悩みがあったとしても軽そう。



傘で電柱を打ちまくっていればそこ一帯はのどかな町です/小坂井大輔「全身が恥部」
→短歌のなかで、この人は一体どうしたんだろう……という人物に出会うとうれしくなります。オレがやったら完全に不審者で、一帯が不穏になりそうで心配です。下校中の小学生の行為と思いたい。前後の歌にはおじさん、お婆ちゃん、ランドセルが出てきます。


なぜ蹴って返さなかったのか素手がサッカーボールの土で汚れる/小坂井大輔「全身が恥部」
→知らない人のサッカーボールが足元に転がってきて、それを返しているところでしょう。拾って手渡しして、蹴ればよかったという。
あーなんかわかります。ひとのものを勝手に蹴ると無礼な気がするし、一緒にサッカーしたがってるように見えたらいやだなとか、考えちゃうんです。


草原を笑われながら駆けていくしゃぼん玉追跡人として/谷川電話「音符かな」
→米川千嘉子さんの「戦争鑑賞人」の歌を思い出して、いや関係ないだろうと引っ込めたんですが、草原と暗い室内・駆ける動作と立つ動作・笑われる側と見る側、といったことを考えるとあながち無関係でもないのかなあと。

空爆の映像はててひつそりと〈戦争鑑賞人〉は立ちたり  米川千嘉子
直接の関係はないにしても、よく裏返っている。
この「笑われながら」っていうのはしゃぼん玉を追いかける姿がその場にいる人達にウケてるんだと読んだ。「たとえはかない夢であっても、たとえ笑われても俺は追いかける」みたいに読もうとして、やっぱりやめた。



ああ走り出したのだろう映像がぶれてるそして黒く途切れる/千種創一「たくさんいる」
→「圧政に対する少数民族の大蜂起」といった内容の連作。場所を特定するような言葉は見えず、しかし年代はわかる。「前世紀」というとはるか昔のようだが、オレも生きてた時代だ。あらためて世紀をまたいで歴史のなかを生きているんだなと思った。
ところどころ太字になっている。誰かが書いたことや言ったことの引用なのだろう。が、「あとでね、」の歌を見るとそう単純でもない。太字の言葉は衝撃的な強い言葉だ。

引いたこの歌は映像という枠がある。不発弾や毒ガスや監獄よりは、ぶれて途切れる映像のほうが馴染みがあってピンとくる。



この今も首長竜のすべり台すべる間にみている夢です/戸田響子「バラカ」
→首長竜の首の部分をすべっているんだろう。
子供のころのようでもあり、はるか昔の恐竜の時代のようでもあり、時間に広がりがある。意識をうしなうほど長いすべり台なのか、あるいは角度が急だったりするのか。



「世間に推したい短歌展」では松本てふこさんの推してる雪舟えまさんを読んでみたくなった。『たんぽるぽる』まだなんですよ。
好きって気持ちがすごく出てる。「時々読んではにこにこしています」っていいなあ。



単純でいて単純でいてそばにいて単純でいてそばにいて/嵯峨直樹






オレは「世間に推したい短歌展」で虫武一俊さんの歌を推しました。
それをここに転載しようかとも思いましたが、「短歌ホリック」を手にとってくださった方が読めばいいことかと思います。







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角川短歌賞予選通過作品「ピンクの壁」50首をnoteで公開しています。400円。
https://t.co/PDVrswIfmt

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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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