笹公人『抒情の奇妙な冒険』を読む  ~スーパーボールに宿るたましい、ほか


歌集。笹公人『抒情の奇妙な冒険』を読んだのでちょっと歌を引きます。
2008年。第三歌集。早川書房。


隣町のピアノ教室燃えている そのけむり 赤 恋のごとくに。/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
→隣町って遠い。遠い恋なんだなと。ピアノを弾くような相手なのかなとイメージできる。それか特定の相手などいない、もっと漠然とした恋のような心かもしれない。下の句に一字空けが多い。この途切れ途切れが印象的。



泣くもんか 砂場に半分埋もれてる科学特捜隊のヘルメット/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
→オレの子供のころはもうそういうの流行ってなかったな。
かっこよくて強いであろう科学特捜隊のトレードマークのひとつが埋もれているというのは、挫折のように見える。あるいは逆に少年に泣かない強さを与えているようにも見える。


ノムラサチヨホソキカズコと唱えれば魔界の数え歌のごとしも/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
2008年の歌集なので、ここで新しいものも今見ると微妙に古い。細木数子はこのころは新しかったんじゃないか。


猫除けのペットボトルを飲み干した親方の読むドストエフスキー/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
→丸つけなかった歌だが、今日外でペットボトルを見たときに思い出したので無印から×に変えた。そんな親方いないだろと思ってノれない。昔はいたのか? 豪快な人はドストエフスキーとか読まなそうっていう前提なのだろう。


二十年(はたとせ)も風呂場の隅に置かれいるスーパーボールに宿るたましい/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
→スーパーボールならオレにも馴染みがある。すぐなくなっちゃって、変なところにあったりする。それが風呂場というのもありそうな話だ。透き通る色のスーパーボールには妖しい力が秘められていそうだ。


「お金では買えないものもあるんだよ」堀江社長の肩にまるい手/笹公人『抒情の奇妙な冒険』
→このまるい手はドラえもんの手なのだろう。前の歌に「ホリエモン」つぎの歌に「堀右衛門」がでてくる。「ホリエモン」と「ドラえもん」をかけている、そのしょうもなさが良い。


そのかみにライダーキックでこしらえた襖の穴をぬける秋風/笹公人『抒情の奇妙な冒険』



気になった歌はそのくらい。固有名詞がほとんどわからなくてつらかった。ググって知ってもそれがなつかしくなるわけではないからなあ。

笹さんはオレの四つ上で、そんなに大きく変わらないかなと思ったんだけど、あまり接点を感じない。自身が生まれるより前のことを書いた、というのはすごいことかもしれないけど、オレの感動にはつながってなくて、むしろ分からなさにしかつながってないからなんとも言えない。
それとも四歳って小さくないのか。最近、「サブカルでは五年ちがうとまったく話が合わない」と聞いた。

オレももっと懐かしくなりたかったなー、っていうのが全体の感想です。いろんなところをピンポイントで突いてるんだから、オレも突かれたかった。でも、楽しそうな感じは伝わってくる。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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