「現代短歌」2016年12月号を読む  ●第4回現代短歌社賞 発表


「現代短歌」2016年12月号。



夜ふかくわが死後の処置を話し合ひ朝開けぬれば雨ふりてをり/岡井隆
現代短歌はこの号からだいぶ変わった。雑誌の冒頭に二人の歌人による作品をもってきたのもその変化の一つだ。




第4回現代短歌社賞が発表された。300首を対象にした賞だ。受賞作品は歌集として出版される。
そこからいくつか引く。


耳たぶのごとく垂れつつ看板は〈帝国探偵社〉を掲げをり/山下翔「湯」
→ビルにくっついてる看板はなるほど耳のようだ。耳は、探偵が情報を探るイメージとも重なる。
「帝国」がものものしい。国家権力が盗み聞きしてるのをイメージしたが、そこまで読んだら読みすぎかもしれない。


妻のいない日曜なんでもできそうでなにもせぬまま「笑点」をみる/野上卓「レプリカの鯨」
→サザエさん症候群というのがあるらしいが、その一時間前の笑点のもたらす憂鬱だってなかなかのものだ。


過ぎてゆく灯りはみんなさびしいなそのやうな顔が車窓に映る/谷とも子「やはらかい水」


言い回し変えて再び頭を下げる言葉に何をさせてるのだらう/川原ゆう子「ビーズクッション」



白鷺の影のごと青鷺のゐてその影のごと青鷺のゐて/永澤優岸「青鷺と白鷺」

→二回でてくる「青鷺」の不思議な歌だ。「影のごと」「のゐて」も繰り返されていて、無限に続いていけそう。二羽の青鷺はほんとに別々なのか。実体と影の境界があやうくなる。

現代短歌社賞からは以上。




紙づまり度々起こすプリンターの機器の暗みに指よごしをり/田中妙「秋思」
→プリンターの話なのに、人の体や心のことにも読めてくる。どこからそう読めるのかよくわからないというところに引き付けられる。強いて言えば下の句なのだろうけど。


小雨受け葉はゆらぎをりゆらぐことそれだけが命であるやうに/藪内亮輔「虚無の歌」
→句またがりにより、「命」が「いの」と「ち」に分かれる。結句に「血」があらわれる。葉に血が通う。

現代短歌がこの号から変わったとさっき書いたが、作品欄のイラストも変わった。何かのようで、何かではないようにも見える絵だ。



漂流の過程で旗になりそうな夏雲色のTシャツを着る/鈴木加成太

とことこと二両の電車がやつてきて「かんかんざか駅」に一両はみ出す/桜川冴子

秋の日は暮れやすくして喪服の人四五人立てり駅のホームに/小池光「ことしの秋」

常闇に命のきはの声あげて わが殺したる者ら迫りく/岡野弘彦



病む兄の命いくばくストローに透けて吸はるるジュースを見つむ/石田久子

→読者歌壇特選の歌。ジュースを吸うのがすなわち生きるということだ。透けることに存在の不確かさ、あやうさが暗示される。
下の句は「ス」やU音が繰り返されている。吸う口の形になる。
そういうのは後から気づくことだが、「この歌のこのあたりに何かある」という形で、無意識に働きかけているのではないか。







オレが「読者歌壇」に出した歌は倉林美千子さんが佳作に、内藤明さんが秀作に選んでくださった。

水無月の冷蔵庫から取り出した朝のたまごのひたすらな白/工藤吉生



以上です。んじゃまた。








朝焼け・中編【1997年7月】
|mk7911|note(ノート)

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高校三年のころに書いた文章。



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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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