「未来」2016年11月号を読む  ~焼売は焼売らしく、ほか


未来 2016年11月号。



朝は弱く昼ごろ混沌 夜となれば宇宙のゴミのごとくに元気/大島史洋



巡回の懐中電灯に映りいるわが点滴の小さな光/前川明人



見渡せばレアポケモンもなかりけり 裏の母屋に婆さんひとり/笹公人

→有名な短歌をふまえている。婆さんがわびしい。
この月は特にポケモンの歌が多く、選者だけでも三人がポケモンの短歌を発表している。

見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ/藤原定家



触れたくてでも触れぬまま帰りたる朝の光は眩しくて死ぬ/岡崎裕美子



言葉では言い表せぬ表情の赤子が人を信じ始める/盛田志保子



はずだった。そして彼らは歩み去り天国行きのバスが出尽くす/三輪晃

→ってことは、乗り遅れた人がいたらそれはみんな地獄行きということになるのか。乗り物はいろいろあるが「バス」というところが現実的だ。
「はずだった。」の前は「自分も天国へ行けるはずだった。」といった内容かと想像した。

死後に味わう種類の絶望ではあるが、「バス」によって、経験したことのある絶望に重なる。バスに乗り遅れたときの感じがよみがえってくる。
「はずだった。」は文章の終わりだけが見えている形だ。走り去る後ろ姿しか見えないバスのようだ。



なにしてるひとなの言ってみなさいと近しいひとを叫ばせている/唐津いづみ



542000208時間テレビに救われる俺/蜂谷希一「痛みを引き受ける」

→一、十、百、千……と数えてしまう歌だ。五億四/千二百万/二百八/時間テレビに/救われる俺、となる。計算したら六万年以上かかる。24時間テレビではとうてい救われない人がいる。



麻痺気絶恐怖毒闇混乱がいちどきに来た夜の三時に/秋山生糸



焼売は焼売らしく焼売の味だけすればよいと言われる/卯月なな子

→シューマイの漢字表記が焼売で、何度も見ると変な字だなと思えてくる。
シューマイ以外の味がするシューマイを作ったとでもいうのか。それともシューマイは主体なのか。「焼売」の部分を性別や職業に変えると生きづらさが湧いてくる。



戻りたいなんてまた言ううどんってすぐ鼻の穴いってしまうし/西藤定
→短歌を読んでるといろんな経験や感覚を思い出すんだけど、食べ物が鼻にいっちゃったときを思い出すなんて初めてだ。あれは苦しいイヤなものだ。
そんな場所を通って元の場所に戻っても、鼻から出たうどんは食べられる前のうどんとは決定的にちがう。ああ、過去には戻れないのだなあ。



日本をほめる番組のCMにも司会者がでていて臨時ニュースもそいつ/主水透
→日本をほめる力がテレビのなかで幅を利かせてきている。「そいつ」という呼び方に嫌悪感がある。



生徒から先に挨拶されるのを一歩二歩待つこころなりけり/三田村広隆



評のページから少し。

愛猫を亡くした初夏(はつなつ)かき氷にふんわり感を求めるきみよ/鈴木和香子

和太鼓の音は外から心臓の音は中から迫りくる夜/加納舞子



野樹かずみさんがおもしろいことを書いていた。同じ言葉をひらがな表記とカタカナ表記にした場合で耳で再現している音の高さが変わるという。「他の人もそうなのか聞いてみたい」とある。「オレもそうです」と答える。
カタカナだと力が入るというか、それともひらがなだと力が抜けるというか。わずかな差なんだけども。
力の加減が音の高さにも影響する。声を大きくしていくと音階も勝手に上がるというのもある。



以上。






『未来』に載ったオレの短歌のまとめはこちら。
http://matome.naver.jp/m/odai/2145087691179204501


んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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