北杜夫『壮年茂吉』を読んだ


壮年茂吉 「つゆじも」~「ともしび」時代 北杜夫著
岩波書店 1800円

「青年茂吉」につづく本。このあと「茂吉彷徨」「晩年茂吉」と続く。


Ⅰ章
谷底を日は照らしたり谷そこにふかき落葉の朽ちし色はや/斎藤茂吉『つゆじも』


みちのくの春の光はすがしくてこの山かげにみづの音する/斎藤茂吉『つゆじも』


空(そら)のはてながき余光(よくわう)をたもちつつ今日(けふ)よりは日がアフリカに落つ/斎藤茂吉『つゆじも』





大きなる都会(とくわい)のなかにたどりつきわれ平凡(へいぼん)に盗難(たうなん)にあふ/斎藤茂吉『つゆじも』

という歌がある。
以前「短歌ヴァーサス」の6号で
最先端情報集まるこの街にわれ平凡に掏模に会ひたり/香川ヒサ「共感」
という歌を見たが、茂吉の本歌どりだったのか。


シンガポールで街娼を買って路上でしようとしたエピソードも印象的。



Ⅱ章

「むかしは線香をともさて、それがとぼりきる前に何首作ったかを競ったものだ。それが根岸短歌会の伝統だった」と茂吉は言ったという。速詠もできる茂吉。




Ⅲ章

ミユンヘンの夜寒(よさむ)となりぬあるよひに味噌汁(みそしる)の夢見てゐきわれは/斎藤茂吉『遍歴』



斎藤家には「株をやってはならぬ」「ダンスをしてはならぬ」という家訓があるという。誰かがやって失敗したことが家訓になるのがおもしろい。




Ⅳ章

漱石はカルタ遊びで子供に取らせて喜ばせたが、茂吉は容赦しなかったという話。茂吉らしさがある。


かすかなるものにもあるかうつせみの我が足元(あしもと)に痰(たん)なむる蟲/斎藤茂吉『ともしび』



茂吉が芥川龍之介に薬を処方していたエピソード。
手紙に「薬は高きものと思召にならざれば利かぬものに候」とある。
芥川の自殺に茂吉は心を痛めた。



『壮年茂吉』おわり。

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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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