「塔」2016年8月号を読む  ~廊下だけの家が欲しいな、ほか

11月18日、時間があったので文学館に「塔」を読みにいった。7月号まで読んでそれっきりになっていたのだ。
8.9.10月号と三冊読めるといいなと思っていた。

出かける前から戦略を練っていた。制限時間をつければ一日で三冊いけるんじゃないかと。一冊読むたびに休憩を10分いれるとして、一冊80分にしようか、どちらかにしようと。

そのために読む順番を考えた。


「塔」80分チャレンジ
【1】まず選歌欄と選歌欄のあいだの気軽なページや評論に目を通す。おもしろそうならちゃんと読む。
【2】特集
【3】新樹集→百葉集→風炎集→特別作品に気になるものがあれば→各欄一席
【4】気になる作者や知ってる人達の歌。
制限時間になったら切り上げる。


なかなかわるくないと思っている。塔が推すものとオレが好むものがあるとして、前者を優先させた読み方。


で、これを実際にやってみたら、途中で切り上げるなんてできなくて上の順番で最後まで読んだ。一冊90分くらい。そうやって8月号を読んで、9月号を読んだ。
そしたら目が疲れたし時間もなくなったから10月号はまた今度読むことにした。

三冊読む目標は達成できなかったが、二冊読んだだけでも満足した。二冊読むと「短歌はもう充分!」って気分になる。

懐かしい、「塔」の香りがした。みなさんが活動している様子を見てうれしくなった。



今回はそのうちの「塔」8月号から書き抜いたのを十数首紹介します。

特集は「マンガと短歌」。塚本邦雄のがきデカ好きのエピソードはすごいなと思っていたら、翌月の誌面時評でも触れられていた。




水のいきもののように雨の窓に寄るまがらぬ足も足のかたちをして居る

言いにくそうにしてくれている医師の声機能は戻らぬことへ行きつきぬ/丸本ふみ



避難所に母を見つけて喜びき その後ケータイ持たぬを責めき/垣野俊一郎

→八月号には熊本地震の歌が多く寄せられている。ここでは人の欲のあり方が浮き彫りにされている。


画家は終わりをみていただろう絵の青の奥へ奥へと鳥のはばたく/中田明子


イースターおめでとうございます。戦争が終わりますように。始まりませんように/千種創一

→戦争が終わったと思ったらまた始まる、そうしたなかを生きてきた方の祈りなのかなと受け止めた。日本はあまりイースターを祝わないけど、そこに深い祈りをこめる人々がいることをこの歌は告げている。

戦争について千種さんが最近ツイートした言葉がある。Twitterの言葉はすぐに時間の彼方へ消えていくが、それを拾い上げてここに置いておこう。

……と思って探したら、もう削除されていた。
オレの記憶で書くと、
戦争や内戦というのはヨーイドンで始まるものではなく静かに近づいてくるもので、だから防ぐのが難しいのだと、
そういう内容のツイートだった。ご紹介したかったんだけど、記憶からで失礼しました。



まるめたる鼻紙のごとき睡蓮よいらいらとしてモネ展に来つ/篠野京
→一連の前半には仕事でつらい目にあった歌があり、後半にこの歌がある。
オレの部屋にもモネの睡蓮があるけど、あらためて見て、なるほどと思った。


帽子あさくかぶり直せり霊園に風が似ている薔薇園に来て/朝井さとる
→霊園の風、にぞくっとする。薔薇園だとことわられても霊園しか感じないくらい強い。帽子とともに魂を連れ去られるような感覚かと想像した。


廊下だけの家が欲しいな休日のこころに黄色い雲ながれ来る/朝井さとる
→さっぱりわからないが、迷わずすぐに書き写した歌。
生活空間として成り立たない住居、現実から少しはなれた色の雲。空虚がある。


このひとは無理だなとおもうおもいつつ本家第一旭たかばし本店のラーメン/荻原伸
→「このひと」も、無理だという中身もぼやけている。だがラーメン屋にだけピントがしっかり合っていて、四句を大幅に字余りさせて正確に言っている。
しらべると京都ラーメンの老舗だというし、京都ではおなじみの場所なのかもしれない。


脱力のさまに流れて山ひとつ道をふさぎぬ旧街道を/なみの亜子
なみのさんの歌をえらく久しぶりに見る思いがした。毎月総合誌で顔写真を見かけるからすごく馴染み深いような気がするが、塔以外の場所ではめったに歌を目にできない。ツイッターで流れてるのもネットで何か言われてるのも見たことない。
大阪弁のメールで短歌のアドバイスをしてるイメージの強い、不思議なポジションのかただ。


見せてやると言つてゐるのにイヤアーとか言ひてこの頃の女学生つたら/永田和宏「手術ふたつ」
→血管を取り出すというような手術だったらしい。ビジュアルが思い描けないなあ。でも、見せてやると言われたらイヤアーってなる。


ほつそりとボールをつく子夕がたのチヤイムが鳴りて少し怯える/花山多佳子
→「ほつそり」がいい。まさかボールをついている様子とは。夕方の心細さがつたわる。



8月号おわり。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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