「短歌研究」11月号を読む ●新進気鋭の歌人たち、ほか


短歌研究 2016年11月号。
「新進気鋭の歌人たち」で注目される一冊ですね。


黄葉より何ありとしも思わねど曲がりゆく道に誘われて行く/高安国世『朝から朝』
カラーページで永田和宏さんが紹介している高安国世の歌がよかった。



湯上がりの濡るる産毛や歯にあててはかなき豆をしごき出すなり/島田修三「深き夢より」
→初句二句とUの音が続くが、ここに官能があろうか。下の句にいくまでは枝豆のこととはわからない。「しごき出す」が動きをうまく言いあらわしている。


口にスマホ当てて自分の喉を撮る小学一年の一人遊びは/梅内美華子「ドラゴンブルー」
→へー今の子はそういうことするんだーという興味がある。
オレも一人遊びはいろいろやったなあと思い出す。小学二年でファミコン買ってもらったから一年ではテレビゲームもやってないな。何してただろう。地面に輪を書いてけんけんぱしてたのを思い出した。どちらが豊かとも寂しいとも言えないが。
喉ってややグロテスクなものだから、そこに現代の気持ち悪さや闇みたいなのを感じようとすればできる。


選りすぐられし街頭のインタビュー誰もが下らぬことしか言わぬ/森本平「狂泉のほとりにて」
→たしかに、いかにも毒にも薬にもならないような意見ばかり出てくる。放送されないすごい意見もあるのだろう。


労働に生をささげて誰からも愛されぬ貨物列車うつくし/中沢直人「ロートマイルド」
→それもそうだなあ。貨物列車は人気ない。愛されぬことで、より美しいのか。

この歌をツイッターでつぶやいた直後、貨物列車をだいすきな人もいると、知らない鉄道オタクの方からリプライいただいた。
「貨物列車」でツイート検索していたとしか思えない速さだ。ほんとに毎日「貨物列車」で検索しているなら、ホンモノだ。



特集は吉井勇。以前小高賢さんの『近代短歌の鑑賞77』を読んだときに、吉井勇にだけ一首も丸がつけられなかったので苦手意識がある。

膝抱きて歌をおもふは項垂(うなだ)れて死をおもふより少し楽しき/吉井勇



「新進気鋭の歌人たち」
みなさん斜めの写真がかっこいい。
ポートレートが正面から写ってないとかで齋藤芳生さんが何か言ってツイッターがざわざわしたのは2013年だけど、3年前のそんなことを思い出したりもした。もうその記録は残ってないでしょうね。


金属の手すりがすこしへこんでるだけなのにとことんさびしいな/阿波野巧也「さらに音楽は鳴り続ける」
→意外なものが感情を刺激してくることがある。そうした発見は詩になる。ひらがながずいぶん続く。
「とこ/とん」と句またがりしている。「とん」にアクセントが置かれ、さびしさが変化してくる。


きつい色のTシャツを着たマネキンに首がないのは不自然じゃない/土岐友浩「バッド・ランド」
→「不自然じゃない」と自然であることとの間にはひらきがあるのだろう。頭部の欠落を不自然じゃなくしてしまう「きつい色」。色が体を食ってしまう。考えるとすこし気味悪い。



安永蕗子さんについての連載に「梁」創刊のことが書いてあった。「梁」は何度か読んだしここでツイートしたこともあったんだけど、成立については検索してもよくわからなかったのだった。今回わかってよかった。「みなみ」じゃなくて「みんなみ」だったのかー。



かすかなるあななれど蟻地獄あり近づいてくる街宣車の音/大井学


道ばたに腰かけているすがたして四分休符いる〈運命〉のなか/大井学

→言われてみるとそんな形だ。「道ばたに」がいいな。よっこらしょと言って老人が一休みしているみたいだと考えてみると、運命の一楽章との対比が鋭い。


何人兄弟かと問はるる度に四人にて三人戦死せしをわが言ふ/吉村睦人

悪い方へわるいはうへと考へのゆくときに舞ふ蜆蝶ゐる/佐藤アサ子

歌集評からすこし引いた。
この本おわり。








オレの歌。
短歌研究詠草は2首。佐佐木幸綱選。


果物の行きつく末のぐじゃぐじゃをアクセントとして八百屋に働く

牛乳のなかでイチゴをスプーンで潰せばにぶく流れ出る色/工藤吉生



うたう★クラブは「うたう★クラブ賞」だった。加藤治郎選。

メガホンを持って応援する者のメガホンの中にある口うごく/工藤吉生

佳作でも載った。

甲子園九回裏の負けそうな生徒の顔はオレにも響く/工藤吉生




んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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