佐藤佐太郎『茂吉秀歌 下巻』を読む  ~ひくき炎もこほしきものぞ、ほか


佐藤佐太郎『茂吉秀歌 下巻』。

下巻は『白桃』から最後まで。



秋(あき)ふけし山(やま)のゆふべにわが焚(た)きしひくき炎(ほのほ)もこほしきものぞ/斎藤茂吉『白桃』
「こほしき」ってなんだろうと思ったが「恋しい気持ち」と自解にある。
「ひくき炎も」はごく楽にできたという。ある句に対して、楽にできたとか苦心したとか、茂吉は自解によく書いている。



北空(きたぞら)に夕雲(ゆうぐも)とぢてうつせみの吾にせまりこむ雪か雨かも/斎藤茂吉『白桃』
「短歌の魅力は、つきつめれば言葉のひびきにある。この作者の歌には胸に迫るひびきがあるが、この歌はまたすさまじい」と佐太郎が書いている。

だけどオレはもっと表面的に言い回しをおもしろがっていた。「北空」という出だしの言葉からして、言えそうでなかなか言えない。「夕雲とぢて」もおもしろい。「せまりこむ」という言い回しも、「雪か雨」と限定してないところも、みんなそれぞれおもしろいなあと。



冬の夜の中空(なかぞら)にいでてさだまらぬ白雲(しらくも)見つつ家に帰りぬ/斎藤茂吉『白桃』



かへるでの太樹(ふとき)に凭(よ)りてわれゐたり年老いし樹のこのしづけさよ/斎藤茂吉『霜』



わが友とただ二人(ふたり)にてとほりたるほとびし赤土(はに)をおもひつつ居り/斎藤茂吉『小園』

→「ほとぶ」は水分をふくんでふやけることだという。「わが友」は私を指すと佐太郎が書いている。
佐太郎はこういうことはほとんど書かないが、上の句にTの音が多い。足音みたい。くぐもった結句にも注目したい。



たかだかと唐(たう)もろこしの並みたつを吾は見てをり日のしづむころ/斎藤茂吉『小園』

けふ一日(ひとひ)雪のはれたるしづかさに小さくなりて日が山に入る/斎藤茂吉『白き山』


夏の歌のあとに冬の歌を引いたが、いずれも日が沈む歌で、さびしさを誘う。



ここに来て狐を見るは楽しかり狐の香(か)こそ日本古代の香(か)/斎藤茂吉『つきかげ』
「何故「日本古代の香」であるかということは私にもわからないし、おそらく作者にも説明できまい」
「作者はかつて、歌は感動に盲目なところがなくてはならないと話されたことがあった。どこまでも直観に即して逡巡しないのが短歌の力なのである」
と佐太郎。



ひろひ来て佐渡のなぎさの赤き石われは愛(あい)しき空襲のした/斎藤茂吉『つきかげ』




以上。
晩年の歌もおもしろい。







オレは毎日少しずつ読んでいる本がある。
本には、一気に読める本と少しずつ読むのに適した本がある。この『茂吉秀歌』は続きが気になるという性質の本ではなく、一気に読むのはしんどい。したがって毎日六ページずつ読んだ。六ページに特別な意味はなく、四だと短くて八だと長いからそうした。

茂吉秀歌のつぎは、講談社の日本現代文学全集の「齋藤茂吉」を読むことにした。七冊の歌集が収録されている。これを毎日二ページ、約60首ずつ読むことにした。
『赤光』を読みはじめたが、おもしろい。一度読んだはずなんだが、すっかり忘れていて、また楽しめる。それらもこのブログで引いていくことになるだろう。



んじゃまた。






最近更新した有料記事。
2016年10月に発表した/掲載された工藤吉生の短歌まとめ【後編】|mk7911|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/na67bf67fba49
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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