加藤治郎『TKO 現代短歌の試み』メモ


加藤治郎『TKO テクニカル・ノックアウト 現代短歌の試み』を読む。

これは著者の第一評論集にあたる。
オレは未来短歌会・彗星集にいながら、こうした本が出ていることを知らなかった。

1995年。五柳書院。2000円。


評論集なんて扱うのは久しぶりだ。
これが教科書、または授業だとして、オレがノートに書き写したものをここに置いておこう。授業を休んだ同級生にノートを貸すように。ただし、オレは自分の興味をもったところしかここには書かない。





感覚イメージの話からはじまる。

言語は、何かを指示した時点で(例えば、「街路樹」としたときに)視覚的イメージを喚起する。触覚、味覚、嗅覚、圧覚といったものが、何ものかを提示する以外に表現され得ないとすれば、感覚は視覚性を基礎とせざるを得ない、ということになる。

聴覚については、他の感覚とは異なった面がある。それは感覚的イメージの中で唯一、視覚的表現をベースにしないで成立し得るという点である。








階層構造の問題。下から、一首、連作、歌集、トータルという階層がある。
一首が集まり連作となる
→連作が集まり歌集となる
→歌集があつまり歌人のトータルなイメージとなる。
一首の歌を、「上位の層から見てどのように位置づけられているかが検討されなければなるまい」






わがいのち暗闇(くらき)に醒めよ わがいのちひかりに熟れよ ナヴェ・ナヴェ・フェヌア/高野公彦『水行』

という歌が何度か引かれる。
高野公彦「オノマトペ使用作品は、原始的な生(せい)の感覚を呼びさますものが多い。音韻を通して行はれる感性的な自己解放――それがオノマトペだと言へるかもしれない」

〈言葉の感触〉の転換が作品の価値を形成しうる

〈言葉の感触〉とは「あるまとまった音韻と表記の複合体としての言葉の質感」である

口語と文語、韻文と散文……などなど。
岡井隆の作品の、一首のなかで異なる言葉の感触をもつおもしろさ。有名な「ヘイ 龍(ドラゴン)」の歌などが挙がっている。


西田政史の連作「Etude for Evergreen」の表記の使い分け。記号
会話体、片仮名表記。ちりばめられたキーワード。
この連作の技法の新しさは、異なった表記にそれぞれある水準の意識が貼り付けられている点にある。



JISコードに存在する、音声化できない文字のこと。「漢字のユウレイ」


猫はわたしを現実にひきもどす
 さっきの電話はやはりあったのだ
/林あまり『ショートカット』







作家は、つねに〈次の作品〉に直面している。歌人であれば〈次の一首〉が最も切実な問題だ。可能性は、その未知の現場にしかありえない。現代短歌の可能性を問われたら、結局こう答えるしかない。やってしまうことだと。


「資本を集約した装置」、たとえばディズニーランドに対して、芸術はなにができるか。
存在をシンプルにし、資本集約的な装置に向かわないこと。逆に、集約されてゆく過程で消失するものを見出だすこと。それは、人間の精神の最初のひらめきのようなものを探りあて、開示することだ。






二句切れとセットになった〈佐佐木幸綱的読点〉は第三歌集から鮮やかに見られるが、第七歌集『瀧の時間』では一掃された。

詩歌とは真夏の鏡、火の額を押し当てて立つ暮るる世界に/佐佐木幸綱


〈待ち〉の作歌法
「偶然その日に出会った種々をうたう」
〈狩〉の作歌法
主題(=歌人が一生かかってうたいたい何か)を軸にしたもの






〈現実〉と〈言葉〉の安定した状態が動揺したときに表現は、始まる。いや、均衡を崩してゆくことで〈現実〉は変わるのだ。





伊藤左千夫の可能性と限界。
社会詠に積極的であったが、批評性をもったのはようやく晩年のことだった。







印をつけたところは以上。
95年というとだいぶ古いようだが、読んでいるとそれを忘れる。
現代において新しい短歌、新しいリアリズムを模索するというのは困難なことだという印象をもった。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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