「未来」2016年10月号(777号)を読む  ~誰もいいねをしないけれども、ほか


未来2016年10月号。777号。
一ヶ月おくれでやっていきます。



万華鏡の散る絵のごとく父の脳こわれゆくのか七夕の夜/浅野美紀
→万華鏡のうえに七夕の星まで出てきて、「父の脳」のバラバラになるさまが強くイメージされる。



介護地獄こんなものではないだろう父母(ちちはは)とわれ床にしゃがみて/飯沼鮎子

父を置きホームの食堂突っ切って小走りに過ぐサザエさん通りを/飯沼鮎子

→父の介護を描いた迫力ある一連。

三人が床にしゃがんでいる一コマを切り取ったのが非凡だ。
サザエさん通りというのは知らないけど、サザエさんは円満な家庭を思わせるので、理想と現実に引き裂かれているのだろうと読んだ。



何ごともなかった如く夕立のはれて大きな坂残される/嵯峨直樹



仏壇にお供えしていた大きなる桃をつかめば現世のおもさ/岩尾淳子




ふりかえる夏の坂道さかあがりできてそのあとできなくなった/やすたけまり

→「坂道」と「さかあがり」でさかが重なっているが、二句で切れていてふたつの坂は直接関係ないものと読んだ。
「できてそのあとできなくなった」は印象的。振り返った夏の坂道は、あるいてきた過去の人生か。



ぽたぽたと落ちるくらいの足音に手術台まで歩いて行ける/田丸まひる
→入院から手術を描いた一連より。
足音が聞こえるようだし、足取りまで見えるようだ。「歩いて行ける」にはギリギリで生きている感じがある。



君に傷、あるいは言語 ひらくたびわかりあへなくなる口ふたつ/本山まりの



猫の死に女四人が居間で泣く父はひとりの寝室で泣く/文月郁葉「鶴をひらく」

→777号記念特集からはこれ一首だけ引く。
オレはだんぜん一人で泣きたいな。男女で悲しみかたが違うのか。



ふんどしの男がふらりとファミチキを買ってゆく夜祭が終わる/戸田響子「雑踏の中の」
→えっ不審者? と思って読みすすむと結句で普通の人に変わる。
祭でなければふんどし姿の客なんて来ないな。祭の描き方としておもしろい。



白飯に海苔を一面敷き詰めてできたくまもんの背中弁当/伊勢崎おかめ
→これならご家庭でも簡単に作れますね。キャラがいつもこっちを向いているとは限らない。



終バスに間に合いましたと呟いた誰もいいねをしないけれども/鈴木麦太朗
→ツイッターやFacebookの人たちとの集まりの帰りだったら、と想像した。
誰も反応してくれなくても自分で良かったと思っている、ほんとはそれでいいはずなのに、そこに無言の冷たさを感じさせられる。
今回ツイッターでつぶやいた短歌のなかで最も「いいね」が多かった。



あんなにも回したルービックキューブが揃わないまま夏、遠くなる/岡本真帆
→さっきの逆上がりの歌に似た味わいの歌かもしれないね。まあオレの好みなんでしょう。できなかったことを思うときのほろにがさ。
「ルービッ/クキューブ」の句またがりに、キューブのいびつで揃わない様子を見ようとしたが、これはちょっと読みすぎたか。



ベランダでポテトチップス食べている明け方 友をきれいに捨てる/竹中優子
→だらしなくって薄情なようだが、そうなるに至った経緯や内面が書かれないので、書かれない部分にもっと深いものがあるのではないかと思いたくなる。



こんな字だつたかなあと子は以上の以を書き損じの履歴書に/志稲祐子



一輪を空き瓶に挿し入れるやうにひとすぢの陽がビル街に射す/飯田彩乃

→この方の歌についてなにか感想を書こうとすると「とても小さなものと、とても大きなものが見事に結び付いている」みたいに書いてしまうし、今回もそうだ。そういう歌に丸をつけたくなるのも毎度のことだ。スケールの大きさ、広がりがいい。







オレの『未来』の短歌はこちら。

- NAVER まとめ http://nav.cx/bJngt5X



んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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