北杜夫『青年茂吉』を読んだ


北杜夫『青年茂吉』
岩波書店 1991年。2200円。

北杜夫が、父・斎藤茂吉の「赤光」「あらたま」時代について歌を引きながら豊かな資料や記憶をもとにつづった文章。


そもそもは三部作で、第三部にあたる『茂吉彷徨』を先に読んだ。

北杜夫『茂吉彷徨』を読む  ~咲く花は咲きつつありて、ほか : ▼存在しない何かへの憧れ
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52151396.html

それがおもしろかったので第一部にあたる『青年茂吉』、第二部にあたる『壮年茂吉』も読んでみることにした。







なかなか序盤から濃い内容で、16ページには

茂吉は生涯性病を患ったことはなかった。このことは、宇田博博士が立証している。そして必要以上にコンドームの愛好者で、長崎医専教授時代には学生にまでそれを薦めた。

とある。「コンドームの愛好者」にはじめはびっくりしたけど、つぎに「立証している」にびっくりした。茂吉くらいになると、さまざまなことが詮索される。



こんな感じで、読みながら印をつけたところを引きながら書いていきますよ。


「赤光」を出版して評判になってからも、しばらくするとその歌が意に満たず、自信を失う心境にもなった。そのため、不満な歌をかなりけずり、相当の改作をし、こまかいところは漢字まで直し、改選「赤光」を出すことになったのである。

茂吉ほどの人物でも歌に自信をなくすのだなと思った。つづけて読んでいくと、茂吉の弱気で繊細な部分もところどころに見られる。



茂吉は極度の音痴で、渡しもその血を引いているが、「君が代」さえもろくに歌えなかった。



死なねばならぬ命(いのち)まもりて看護婦はしろき火かかぐ狂院のよるに/斎藤茂吉




茂吉の早漏ぶりが79ページに書いてある。
父の実弟の四郎兵衛は、「兄貴の性欲はオレの三分の一だ」「兄貴は鶏よりも早い」と、私に直接話してきかせたものだが、その他にもベルリンで茂吉の女の世話をした前田茂三郎氏が、その女から聞いたのもやはり「鶏よりも早い」という文句であった。

オレはこういうのをおもしろがって読むわけだが、さっきも書いたように「死後そこまで暴かれるのか」といった気持ち悪さもある。



後半は「あらたま」時代。

こころむなしくここに来(きた)れりあはれあはれ土(つち)の窪(くぼみ)にくまなき光(ひかり)/斎藤茂吉


205ページ。
茂吉には「走る」「急ぐ」といった言葉を含む歌が『赤光』には十数首見られ、いっぽうで土屋文明『ふゆくさ』には3首しかないという比較がおもしろかった。そしてそれ以降の歌集ではふたりとも、一首も走る歌が見られないと。



印をつけたのは以上。以外とすくなかったな。おわります。

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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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