「短歌研究」2016年10月号を読む  ~遠くまで行った夢だよ、ほか

短歌研究 2016年10月号。

しばらく一ヶ月遅れがつづいていたが、読むものを減らして追いついた。なにが減ったかというと「塔」。塔は毎月は無理でもまた読めるときに読みたいです。



泣くために掌(て)もてしずかに覆うとき顔はいつでも裸と思う/今井恵子「裸」




短歌研究新人賞を受賞した武田穂佳さんの受賞第一作が掲載されている。

ひな鳥が餌を欲しがるようにして歌う湧井のデカい学ラン/武田穂佳「見切られた桃」
→何度かでてくる「湧井」に存在感がある。おいしいポジションに湧井はいる。
歌い方はひな鳥でも、学ランはデカい。このギャップ。


今日の昼君が初めて夢に出てわたしと並んでしゃがんでくれた/武田穂佳「見切られた桃」
→「並んでしゃがんでくれた」がいい。少し一緒にいて、とりとめもないようなことをしゃべったりしゃべらなかったりしたのだろうと想像する。そしてそれが夢。「初めて」もいい。待望の初登場だったのだろう。



永からば怪しまるべし二分(ふん)だけ生家の跡にたたずまむとす

「はい、二分経つた」と生家の跡を去り山中はんの家の前行く/安田純生「抜け目」

→オレも昔住んでた家や通ってた学校に行ったことがある。長くはいられない感じはわかる。
なつかしむ気持ちもあるが、怪しまれるのを怖れたり、「二分」と決めたり、「はい、二分経つた」と時間通りに打ち切る気持ちもある。自制が強くて、滑稽でさえある。



前かがみに人々走らす広重の雨の角度をいま窓に見る/遠藤由季「広重の雨」
→絵のまえにいるのではない。窓を通して雨を見ている。豊かな連想だ。雨の角度をきっかけにして、前かがみに走る昔の人々のイメージが浮かぶ。



遠くまで行った夢だよ トーストを焼いて渡して連れ合いに言う/三枝昴之『それぞれの桜』
→朝食の様子ははっきりしているのに「遠く」は、まったくどんな場所かが見えない。地理的な遠さだけでなく、時間的な遠さを思った。「連れ合い」って言い方が、もう若くない人の言い方だ。かつては二人で「遠く」へも行ったのだろう。夢の中は共有できないが、朝を共に過ごしている。








オレの歌も。
オレは短歌研究詠草で、佐佐木幸綱さんの選で四首載った。

回転寿司に来て考えた人間が回っていても楽しかろうと
さっき来た寿司が再びやってくるさっき取らずに今も取らない
百円の寿司に混ざった二百円の寿司は高嶺の皿として咲く
寿司を見ることに飽きればレーン越しの女の客の右腕や腋
/工藤吉生



「うたう★クラブ」は佳作。なみ
の亜子さんの選。完成度の高さを示す「星」をいただいた。

塗り立てのペンキの赤が気持ちいいナントカ荘のために振り向く/工藤吉生




んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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