千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』  ~風のすきまに消えたあの子は、ほか

千葉聡さんの第二歌集『そこにある光と傷と忘れもの』からちょっと歌を引きます。

2003年の歌集。


帰り道「帰り道でのことです」と始まる本のことを思った/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』
→この歌集は最初のほうと最後のほうに本のことがいろいろでてくる。
本の一行目ってあんまり覚えてないなあ。本が好きな人はいくつも覚えてるものなんだろうか。
いつもの帰り道が物語の発端になるような予感。


私語それは痛みだ 僕に向けられていない言葉が僕を突き刺す/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』
→120ページくらいあるうちの36ページから教員生活の歌が入ってくる。
私語をされる先生の気持ちって、突き刺されるような気持ちだったのか。生徒はそんなことは思いもしないだろう。


窓際の席を誰かが「青空の席」と言ったが流行(はや)らなかった/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』
→そういえば学校で急に何かが流行ったりしたなあとなつかしく思い出した。
流行らなかったことを思い出している。「青空の席」はこの作者が好みそうだな。


老化とは生徒がくれたCDの歌詞に赤ペンを入れたくなること/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』



さよならと言った自分に照れたのか風のすきまに消えたあの子は/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』

→「風のすきまに」がおもしろい。幻みたいにふっと消えたのかと思った。
なんでもないような言葉に照れて走り出したりするのも、若いと思う。いいねえと思う。



ブラバンの顧問の証(あかし)の指揮棒を落として三秒以内に拾う/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』
→三秒ルールだ。ばっちくない。セーフセーフ。
なんて言いながら練習してるのかな。



「、」で終わる文なんてない ないものはない ないもののような学校/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』
→ひとつの歌に一字空けを二回入れて三つに分けてるような歌が歌集のなかに目だった。
学校の授業のなかでの決まりはゆるぎないが、学校から外に出れば通用しなくて、広い社会から見ればないも同然だ。と読んだ。

「、」で終わるのもそうだけど、たとえば句読点を入れないでツイートする人に「そんなものはない」と言ってみても実にむなしい。
学校で教える立場からこういうことを言うのだから、重い。自分の仕事に疑問をもつこともあるのだ。


プリントを半分持ってくれたT「俺を誉めるなよ」という目をして/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』



雪の夜、太郎は次郎の墓へ行き、たった二行の詩を朗読した/千葉聡『そこにある光と傷と忘れもの』

→有名な詩を下敷きにした歌。二人いれば、どちらかがいつか一人残される可能性があるんだと思い当たった。
Twitterでツイートしたときに今回もっとも反応が多かった。



ちばさと先生といえば学校の歌、というイメージで読んだけど、学校での歌は36ページから72ページまでで、意外とすくない。
終盤には同時多発テロの歌もあった。
この歌集おわり。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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