「うたつかい」2016年夏号を読む  ~開けてはならぬものの明るさ、ほか

うたつかい2016夏号。


どちらでもよいに○した どうだっていいがあったらそっちにしてた/阿南周平「傷痕」
→「どちらでもよい」と「どうだっていい」。少しの違いで投げやり感が増しています。


燃やせないゴミのようです火をつけてしまえば燃えるゴミのようです/小早川「燃やせないゴミ」
→ほかの四首を見ると人と人の心理について詠んでいて、このゴミの歌についてもそうした読みが可能です。
いけないとされていても、やってしまえばできますよと。しかし、燃えないゴミを燃やすと危険なことになります。


今日はやたら赤い車が走ってる誰も死なないよい一日だ/谷じゃこ「スーパーポンポコジャガピータウン」
→赤い車じゃない車も走ってるにちがいないし、それと同じように、どこかでは今日も人が死んでいるにちがいありません。
想像を交えずに自分の見える範囲だけを見ることで成立する状態です。肯定的な下の句に立ち止まりました。すがすがしいです。
赤になんらかの意味を読むこともできるでしょう。


iPhoneを忘れてしまった一日は指に包帯しているようで/春森糸結「分身」
→スマホの歌がならんでいまして、この「分身」とはスマホのことでしょう。
この歌は下の句の比喩のささやかさが良かったです。


苦しみがスゲエな(そうか?)苦しみはそんなにスゴくなくなっていた/木曜何某「にが」
→「スゲエ」ってカタカナで言っていて、客観的です。スポーツの大技でも見た時みたいな表現です。それをさらに(そうか?)と疑う者がいます。苦しみながらもどこか冷めていて、疑いが苦しみに勝ります。


家電屋のテレビ画面に清原はひとり残らず空振りをせり/千葉優作
→「ひとり残らず」が良いです。空振りしてない架空の清原がほんの少し感じられます。
それにしても、清原ですよ。薬物のイメージが強くついてしまいまして、「空振り」にべつの意味が付いてくるようです。


真夜中の観音開きの冷蔵庫開けてはならぬものの明るさ/月下  桜
→「観音」が開けてはならない感じを連れて来ているんでしょうかね。家電に聖性がやどります。


火の出ない中火でゆするフライパンIHっていいひとの略/外川菊絵
→比喩が決まっていて言葉遊びも巧みです。「ゆする」は何気ないようでなかなか出てこない、それでいて適切な言葉じゃないでしょうか。うまい。



たたさんの連載で印象に残ったのは、競技かるたを始めて二年で四段になったけど五段になるまで十七年かかったというところ。
よく粘りづよく続けて向上しているなあと、素晴らしいなと思いました。
オレなんて、結果がついてこなくなるとすぐ嫌になってしまう。

たくさんの嘘をあなたについたけど大丈夫って嘘は初めて/田中ましろ『かたすみさがし』








オレの出した歌を、自由詠5首だけ載せておきます。



「夏の一枚」 工藤吉生

二十秒ほどの電話をあなたから切られて夜の部屋の中央

居ずまいを正した夜がエンジンの音を低めに折り込んでゆく

この当時オレが笑っていたなんて信じ難いが夏の一枚

哀感と呼ぶべきものが心臓をしみ出してもう指の先まで

演奏をやめて十年ほど経ってまだ指が弾きたがるトリルを





んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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