「現代短歌」2016年8月号を読む  ~音なき界を深めつつ、ほか

「現代短歌」2016年8月号。


いよいよに音なき界を深めつつ相触れて飛ぶ蝶のふたひら/奈賀美和子「龍が鳴く」


夕雲に一両列車照らされてどの窓もこの世だけを見せるよ/大森静佳「旅のつづき」

→この世ならぬものの見えそうな夕方だったのかな。
列車から異世界にいく話があるけど、列車の窓は空想を誘うのかもしれないね。



特集は「熊本地震を詠む」。オレは大阪から西に行ったことがないんで熊本のことはわかんないんだけど、地震なら少し経験している。自分に引き付けるのは少し申し訳ないけど、その経験を思い返しながら読んだ。


選挙のためには良い時に震災が起きたなどと政治家でも人間でもなき奴が言ふ/楠田立身「益城」
→政治家でも人間でもないようなことを言うものが、人間の政治家なのだからまいってしまう。


一夜にて廃屋となりしマンションに小さくズボン干されたるまま/河上洋子「熊本地震」






運ばるるエスカレーターにもの思ふこころは重量の如きを帯びぬ/島田幸典「白き札」


光る箱雨夜にありてそこに立つ人は総身見せて電話す/島田幸典「白き札」

→電話しているだけなのに、雨の夜に全身を光に照らされるという、すごく目立つことになってしまっている。
直接は関係ないが、携帯電話が普及してくると、電話ボックスの見方がかわってくる。


せせらぎに差す月光のごときもの秘めて或る日は人を見舞えり/谷岡亜紀「夜の河口」


夢の中で夢と知りつつみる夢のごとく西日の中にありたり/谷岡亜紀「夜の河口」

→「明晰夢」と書いてしまえば一言で済むが、「夢の中で夢と知りつつみる夢」とすることで「夢」が繰り返され深い夢にまどろむような気持ちになってくる。



二つ目の特集は「生誕130年の歌人」

きみとゐてなほ待つもののあるごときこころのつくるさまざまのかげ/三ヶ島葭子


わが影のうつる日なたの街道をすでに何里かあるきて来たり/木下利玄


灯(ほ)あかりのほとほととゞかぬくらがりに大木(たいぼく)の幹の太々(ふとぶと)とあり/木下利玄


夏の夜のうす紫のうすもののうすき情(なさけ)の君をわすれず/吉井勇

→「うす」が繰り返される。夏の夜に読むと、なんだか涼しげでいいな。


我が前に立ちいし人がつり革の揺れを残して離れてゆきぬ/山内頌子「風待月」
→同じ別れの歌でも、こちらは吉井勇ほどの強い思いはない。ささやかだ。
つり革ってそんなに揺れるかと考えていた。わずかな揺れだと想像する。


ぬかるみは踏み場なきまで足跡がうごめきてをりきのふも今日(けふ)も/森岡貞香
→「足跡がうごめきて」は想像だけども、そのように見えるのはなんだかわかる。かつてそこを歩いたたくさんの足が見えてくるようだ。
二句や結句にも見どころがある。







オレは「読者歌壇」で初の特選をいただいた。ありがたい。
それについては以前くわしく書いたので、こちらを参照。

「現代短歌」2016年8月号の読者歌壇で特選をいただきました/これまでの掲載歌まとめ :
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52170515.html






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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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