西村賢太『苦役列車』を読んだ

西村賢太の『苦役列車』を読んだ。現代の小説を読むことはめったにない。たぶん、いとうせいこうの『想像ラジオ』以来。
短歌以外もいろいろ読まなきゃなと最近は思っている。横のつながりっていうか。

一度、ある編集者の方に、「工藤さんの短歌は西村賢太を思わせる」って言われたことがあって、それから気にしていた。そんなことを言われたのはこの一回だけだった。




『苦役列車』はどんな小説かっていうと、
中卒で、父親が性犯罪者という主人公が劣等感のなかでその日暮らしをするっていう話。
日雇いの肉体労働をして、貯金するわけでもなく酒と風俗に使っちゃって、うじうじと暮らしている。

そこへ日下部っていう男があらわれる。気があっていい友人になる。
日下部は真面目で、日雇い仕事を真面目にやって昇格していく。主人公もその影響ですこし勤務が真面目になる。
でもなんかこの主人公は真面目になりきれなくて、脱落しちゃうんだな。

主人公は日下部の恋人を妬んで、酒の席で嫌味を言ったりウザがらみしまくって仲が悪くなってしまう。
仕事場でもうまくいかなくて、上司とケンカして騒ぎをおこして辞めさせられる。日雇いですら勤まらない。

まあそんなような話で、主人公のダメぶりが、なんだか他人と思えないものがあった。能力がないくせに嫉妬ぶかくてカッとなりやすく、かといってチャンスがあっても向上していけない。
でもなんだか凄味があってバカにできなくて、オレみたいな人間よりはよほどマシなような気がした。



同時に収録されていた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」も読んだ。
主人公はさっきの「苦役列車」と同じ「貫多」という名前で、年齢が倍くらいになっている。ひどい腰痛で、作家としての成功を夢見ている。川端康成賞の候補になっていて、受賞のためにジンクスを試したりしている。

作家や評論家の名前がいろいろ出てくるんだけど、聞いたことないような人たちばかりだった。文学って広いんだなと思った。
作家として突然編集者との約束をすっぽかしたりして、この主人公の性質は変化していない。
「彼は文名を上げたかった」
の一文が妙に心に残った。

成功や、賞に飢えている気持ちの描写や、ジンクスにすがる様子に親近感をおぼえた。腰痛のつらさもわかる。

というわけでこの作者のほかの本も読んでみたくなった。そして『暗渠の宿』を買ってきた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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