「稀風社の貢献」を読む  ~笑う猿笑わない猿、ほか

「稀風社の貢献」を読みます。
一冊まるごと「第一回石井僚一短歌賞」の発表と選考会という本です。たいへん刺激的でした。

オレは賞金目当てで出して、まったくダメで、それでソッポを向いてはみたけど、後になって気になって通販でこの本を買ったという感じです。

良さがよくわからない作品もあったんですが、これだけの読める人たちが熱心に語っているのを読んでいると、わかってくることもあります。

特殊な本の時には必ず言ってますが、「いつも通りオレにとって面白かった歌をご紹介してなにか言ったり言わなかったりします。」



即日のエイズ検査が陰性でやったねという名の海老よこせ/やまだわるいこ「21歳」
→そのまま読むと、変な名前の海老だなということになります。「やったね」のところで大きく切れているんですね。「やったね」でその件は完全に終了して、早くも次の生命の営みに入っている。


「二百五十六年後には紫陽花が地球全土を覆っています」/田村穂隆「君が知らない夏」
→二百五十六がいいと思いました。一を二倍にしていくとこの数字になるから。紫陽花がどんどん倍増して地球を覆うんだろうなと。


比較的地味なメンツで開かれた二次会 主任が歌うハナミズキ/竹中優子「右に曲がって」
→ハナミズキをもってきたのが最高だなと思いました。地味な人が歌いそうな名曲。いい曲なんですよ。これで盛り上がるかはともかく。


笑う猿笑わない猿いっせいに冷たい声で会いたいと言う/竹中優子「右に曲がって」
→「笑う猿」からどんどんシリアスになっていく、背筋の凍るような歌。
笑っていたりいなかったりしていたはずの猿が「いっせいに」ひとつの言葉を言いますが、一体なんの力がこの時の猿たちを束ねたんでしょう。


ラーメン屋みたくジャンプに名前を書く何だお前緊張してるのか/迂回「気配にじぶん」
→「みたく」ってことはラーメン屋じゃないんだけど、だったらここはどこなんだろうと。
最近オレは泌尿器科のビックコミックスピリッツに医院の名前が書いてあるのを見ました。はじめは緊張するのかなあ。今までは先輩が書いていて、これからは新入りも書いて。すごくこまかい事柄にも初めての時間がある。


ハメ撮りを待ち受け画面にしないさいね セックス見れるし時刻もわかる/直泰「伊佐坂先生でもあるまいに」
→評で言われている、「もがいている」「闘ってる」「まじめ」というのが、よくよく読むとわかってきた。
例えばこの歌だったら、本来分けられているはずのものを無理矢理ひとつにさせられている。一番のポイントは「しなさいね」の命令形だ。「ね」によってとげとげしさは無くなったが、命令には変わりない。

スイカ割りの歌には命令されるグロテスクさが出ている。女性用エレベーターの歌は、ひとつの踏み外しが許されない世界を描く。ハリー・ポッターの歌は言いたいことがねじ曲げられる社会を思わせる。



虚空ばかり満つる住居のつまようじを掃除機で吸い虚空を守る/葛生東「鳴りやまねえ」



死にたいと生きたいの「たい」に俺はいて幻想即興曲は下降する/葛生東「鳴りやまねえ」

→幻想即興曲って、すごくドラマチックというか劇的な下降の仕方をする。そこを切り取っただけでも、いいぞ! と思うところだ。
「死にたい」は「生きたい」だ、とはよく言うけどもね。


からまってしまった毛布を捻りきるようにあなたは寝返りをうつ/北虎叡人「しずかな沼」



選後評もすばらしかった。それぞれの思いがあって。自分の作品はどんな料理に見えるのだろうと考えてみたりもした。

終わります。







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ほかにはこんな記事があります。

【第一回石井僚一短歌賞】に落選した連作 20首
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第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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