「塔」2016年6月号を読む  ~深く愛せたほうが勝ち、ほか

「塔」2016年6月号。

一ヶ月遅れですがやっていきます。

基本的には結社誌について紹介するときは月詠中心で取り上げています。そこは頑固にやっていきたいと思います。
賞とか、若い会員の特集に目を奪われがちですが、結社誌なら中心は月詠だろうというこだわりがあります。




ゆらめける水とおもいて近づけば激しく塗りし筆跡(ふであと)に遭う/吉川宏志「モネの絵に」
→筆づかいを見るというのは絵を見るときの一つの楽しみ方ですね。画像や印刷物ではなかなかわからないところです。


生きてゐる父がゆつくり起ち居する石棺のやうな真白き小部屋/岡部史「父」


午後二時に身づくろいして泣きに行く石垣続く竹藪の道/木村陽子


黒板に「卒業式」の白い文字もう日直の名前はなくて/垣野俊一郎

→日直の名前が書かれていないというささやかなところに、卒業式が特別な日である実感があります。


第四レースヒメタチバナは勝ち馬にならず花言葉は「おもいで」/宮地しもん
→花言葉でこんな味わいが出せるのかと、新鮮に思いました。


黙祷の間にひとつしわぶきの低く聞こえて黙祷終わる/関野裕之
→一つの咳が黙祷の沈黙を破ります。たくさんの黙祷のなかに咳は低く響いたことでしょう。


十分に編集された生い立ちのビデオ映像ながれつづける/岡本幸緒
→こういう場所、ありますね。オレの知ってるところだと文学館とか美術館でこういう映像が流れっぱなしになっています。
死んだらまた同じ人生をやりなおす、永久に短い生を繰り返すというひとつの死生観といいますか、思想、宗教を感じます。


だとしたら深く愛せたほうが勝ち勝ちってことですこしだけ泣く/宇梶晶子
→愛を勝ち負けではかることのむなしさ。「だとしたら」の前にあるものを想像してみたりしました。


教室の窓閉めるのみの訓練もありけり原発の町に育ちて/大坂瑞貴


五種類の薬それぞれ束ねたる小さき輪ゴムで五輪を作る/宗形光

→五輪というとオリンピックです。四年に一度の祭典、色あざやかな輪、鍛えぬかれたアスリートの肉体。
そういったものと、輪ゴムだとか毎日の薬の服用が必要な体とにギャップがありまして、なんともわびしさがあります。


蘊蓄を意外な人から聞いてゐると思ひつつ聞く重力波のこと/北島邦夫


マリオネットが右肩あがりに吊るされる妥協とはこんな形だと思ふ/北島邦夫




以上です。







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谷じゃこさんの、短歌で遊ぶフリーペーパー「バッテラ 05号」に、わたくし工藤吉生がゲストとして参加させていただいています。

テーマは「ゲーム」です。二人のいろいろなゲームの短歌が載っています。
また、ゲームと関係なしに連作もあります。


7/23の札幌文フリ(文学フリマ)、めためたドロップス(う-18)で配布するとのことです!
ほかにもいくつかのお店などで手に入ります。
どうぞよろしくお願いします。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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