短歌結社誌「コスモス」2003年4月号を読んでみた

短歌結社誌「コスモス」の2003年4月号を読んだ。
ブックオフで108円だったので買ってきた。

コスモスを読むのは初めて。

この結社はどんなシステムなんだろうと考えながら読むのが楽しかった。コスモスは会員がとても多いので、おのずから誌面も違ってくる。



260ページあり、本体1300円+税。
ちなみに塔は一冊1000円、未来は一冊1800円でどちらも平均200~220ページ程度。






作品欄を見る。欄は七つ。

「月集特別作品」6人。タイトル付きで5-6首掲載

「月集スバル」31人。5首掲載。
選者小言によると、この欄は選者と元選者の作品が載っている欄で、5首提出、無選。

「月集シリウス」92人。4-5首掲載。スバル以外の月集。
7首提出でそこから選がなされる。


塔も未来もコスモスも一番最初の欄は「月集」と呼ばれる。この2字に、文字から読み取れる以上の意味があるのか。
とにかくコスモスは月集が三つに分かれている。



「その一集」982人。選者9人がいて、それぞれの選者が推薦した6人は5首掲載。それ以外は3-4首掲載。

この号までは「その一集」はAとBに分けられていたらしい。
十人に一人が4首掲載で残りは3首掲載だったのが、この号から五人に一人が4首掲載に変わったとある。採れる歌の総数があらかじめ決まっている仕組み。


「COSMOS集」43人。タイトル付き5首掲載。
アルファベット表記の名前からしても、タイトル付きであることからしても、選者の名前が無いことからしても、通常の欄とはちがうのだろうと推測できる。
ホームページ(2015年11月から更新されていない)によると、あすなろ集とその二集から厳選された作品がここに載る。


「あすなろ集」1043人。2-4首掲載。
選者ごとに「今月の3首」をえらんでいる。

「その二集」415人。2-4首掲載。
選者ごとに「今月の5首」をえらんでいる。

その「今月の3首」とかに載ることや、その前に書いた「COSMOS集」に載ることなどがひとつのモチベーションというか励みになるところだろう。


以上、ざっと数えて出詠者2600人、選者は25人。
ひとつの欄に一人の選者がいるのではなく、大きな欄に複数の選者がついている。






特集は、追悼 島田幸造。知らない方だったが、読むとコスモスの選者だった方で、宮城県の方だという。そうなると興味が持てる。

ほかに、随筆、歌集紹介、歌集評、読み物、万葉集に関する連載がある。



「合評」のページに個性的なところがあった。
たとえば「未来」に合評はなくて、「塔」には会員二人が評を交わす「作品合評」というページがある。
「コスモス」の合評は、三人による。指名者(歌ごとに異なる)による評、作者の自解、それらを受けてのコスモス選者の評。



選歌後記にあたるのが「選者小言」。誌面の全体的な感想を書いている選者もあれば、具体的に歌を添削している選者もいる。



歌を添削して載せることには肯定的なようだ。添削を断る旨を申し出る会員もいる。
「宮柊二先生は助詞一つ変えるだけで見事な添削をされた。私達も作品のために必要な添削にとどめているのだが。」と日野原典子さん。





250ページに編集後記にあたるであろう「コスモス便」がある。

その次から字の色が青くなって「通信 コスモス」というページになる。
エッセイ的なものがいくつかあり、歌会報告がある。

歌会報告は、場所、参加者、高得点歌一首が記された簡潔なものだ。全国各地の80もの歌会・勉強会の報告が5ページ強にまとまっている。

ちなみに「塔」や「未来」の歌会報告の場合は十数ページにわたっている。複数の歌が載ったり、歌にどんな評がついたかが書かれていたり、時にはその日の天気まで書いてあったりする。







巻末に詠草用の原稿用紙が添付されている。このシステムは「塔」に似ている。職業と年齢を書く欄があるのは塔と違う。
塔の詠草用原稿用紙ともう一つちがうのは、30マスであることだ。短歌は31文字だから、すべて仮名で書くとはみだしてしまう。「きゃ」「きゅ」「きょ」など一音で二マス使う文字にも注意だ。自然と漢字が多くなるだろう。

原稿用紙の裏には支部の歌会予定と連絡先がびっしり書いている。

これが挟まったままということは、この本の持ち主は出詠しなかったということだ。あるいはコスモス会員ではない可能性もある。



ホームページを読んで情報を補った。
「その二集」が新入会員の欄だ。
昇欄は毎年会議により決められる。

会費はその二集で月1300円で、あすなろ集に上がると1900円に上がる。昇欄ごとに上がる。
(ほかの結社を見ると、半年で6000~10000円が多い)








最後に、印象に残った歌を引こう。


はるかなる星より着くと思ひたし名前しるさぬ賀状ふたひら/松尾佳津予


見馴れたる顔なれど遂に親しまずイサマ・ピンラデン異次元の人/鈴木英夫

→ウサマ・ビン・ラディン、とオレは記憶していたので、だいぶ違うことに驚いた。異次元とまで突き放したところに味がある。


地下道をゆきつつ思ふホームレスとなりて寝転ぶまでのプロセス/杜沢光一郎


この号より提出は5首、かつ自選つまり無選歌の歌を清書す/奥村晃作

→結社誌のシステムの変更をそのまま歌にしている。


選者は選を受けない代わりに提出できる歌の数が減る仕組み。
月集以外の会員は10首提出。どんなに高く評価されても7首以上載ることはない。「落とす選歌ではなく拾う選歌だ」と書いている選者がいた。



みどりごに体のかたち似るゆゑにドラえもんから目がはなせない/斉藤倫子


パラソルの影うしろより迫り来て吾が考へを不意に断ちたり/島田幸造


ただひとりわれの秘密を知りてゐし伯父の葬儀のこともなく過ぐ/島田幸造

→伯父とともに秘密も葬られた。葬儀のうちもまだ秘密は生きていたか。


私が若い男と駆落ちをする夢見たと言われ嬉しい/石山朱音


トーナメントのシードの位置を占めるごと隅より電車の座席は埋まる/今宿芳弘

→これはなるほどと思った。確かにどちらも隅から埋まる。電車の席に腰かけた乗客たちは、これからの戦いを待つかのようだ。




以上です。
一冊の結社誌から見えるものって多いなと思いました。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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