岡井隆『歌を創るこころ』を読む  ~カンガルは如何如何、ほか

NHK短歌入門 岡井隆『歌を創るこころ』を読みました。

主にテーマ別に古今の名歌秀歌を取り上げて解説する本ですが、はじめのほうには添削例もあります。



53ページ「結句の大切さ」にこんな文章があり、印をつけました。

わたしたちは、短歌を読んでいくときに、(もちろん、無意識のうちに、ではありますが)心の中のどこかを、はっきりと言い当てられたいと思っているようです。的をしぼって、ある一点を言ってほしいと欲求しているのではないかと思います。

言われてみるとそんな気がします。



自転車を押しつつ愉(たの)し星空へ立て掛けしごと冬の坂あり/久葉堯『海上銀河』



霜月の冬とふこのごろ只(ただ)曇り今日もくもれり思ふこと多し/伊藤左千夫「冬のくもり」



カンガルの大好きな少女が今日も来てカンガルは如何(いかが)如何(如何)かと聞く/前川佐美雄『植物祭』

→カンガルーをこの頃はカンガルと言っていたのでしょう。
いかがと言われても困りますね。「ぼく(わたし)も好きだよ」と言ってほしいのでしょうか。
「今日も来て」ってことは、たびたび来てカンガルのことを聞くんでしょうか。不思議な少女です。
「カンガル」と「いかがいかが」の音が重なり、呪文のようです。



あまのはら見る見るうちにかりがねの一(ひと)つら低くなり行きにけり/斎藤茂吉『白桃』
→「あまのはら」で広大なイメージを持たせてから低さを出すことで振り幅の大きい歌になっているのだと思います。



169ページに「夕占」という言葉が出てきました。
これは、人々の多く通る四辻なんかで、ふとききとめた言葉から未来を占ったり、願いごとを占ったりする一種の言霊信仰
なのだそうです。おもしろい占いがあるものです。



ポニーテイルを揺らしつつ劇薬のラベル貼(は)り替へてゐる君の影/喜多昭夫『青夕焼』
→劇薬のラベルを張り替えるのはなんとも邪悪な行為ですが、ポニーテイルはそれを感じさせない髪型で、そのギャップにおもしろさがありそうです。「影」にフォーカスしたのもよいです。ポニーテイルはあくまでも影なのです。



風たかき白桃の園をぬけ出でてかうかうと我をいつはるのみぞ/坂井修一『ラビュリントスの日々』



頬(ほほ)の肉(しし)落ちぬと人の驚くに落ちけるかもとさすりても見し/長塚節

→驚かれるということは目に見えて落ちているんでしょうが、とぼけたような身ぶりがあります。



人間とて金と同じでさびしがりやですから集るところに集る/石田比呂志

それなりの帳じり合っているひと生(よ)今宵(こよい)の風呂に首出している/石田比呂志


石田比呂志の歌は、ワサビの効いた、ずばりと警句めいたことをいう歌として紹介されていました。




以上です。
んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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