2016上半期短歌大賞 55首【4】ツイッター部門ほか

第5回ぬらっと!短歌大賞 ( #2016上半期短歌大賞 )
三つ目の「その他歌集歌書部門」のつづきからです。



このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら






ついに来ぬ人を待ちつつ待ち場所を少しずつ右にずらせてゆく/光栄堯夫『ゴドーそれから』
#2016上半期短歌大賞 38/55


ここから四首は黒瀬珂瀾さんの『街角の歌』から引きます。
全然聞いたこともないような知らない歌人の歌集のおもしろい歌が紹介されていて、刺激を受けました。
「→そのままどこへ行くのか。まさか帰ってしまうのか。いいや帰れないし、どこにも行けないだろう。会える確率はいよいよはてしなくゼロに近づいていく。
ベケットはオレも読んだ。」

と以前書きました。
舞台作品となると、いよいよどこにも行けなさが強くなりそうです。



駅前は自自自自自自公公社民民主主主主共恋人は来ない/大野道夫『冬ビア・ドロローサ』
#2016上半期短歌大賞 39/55

「→同じ字がつづくと楽しい。こどもかよって感じだけど。
「共」が「今日」みたい。平成12年の歌集だが、今とそれほど政党の勢力は変わってないような。」

と以前書きました。今でも同じことを書くと思います。



七階からみおろす午後の がらくたの あのごみどもの 虫けら達の ああめちゃめちゃの東京の街/加藤克己
#2016上半期短歌大賞 40/55

「→七音ずつきっちりはみ出してくる。そして意味が重複している。こういう余らせ方もあるんだなあ。過剰さが憎しみを伝える。」
と少し前のオレが書いてます。



あ 雨の匂い 日暮れの舗装路を閑かに多数派が埋めていく/勝野かおり『Br 臭素』
#2016上半期短歌大賞 41/55

「31音だけど、上の句は一字空けの位置によってふつうじゃないリズムになる。一字空けの前後の母音が揃えられている。あ→雨、匂い→日暮れ。舗装路を→閑か、もそうか。
一字空けられていてもつながっているというか、自然な感じがする。」

と以前書きました。

「閑か」をオレは「のどか」と読んだからそう書いたんですが、「しずか」とも読むようです。これについてはYahoo!知恵袋に複数質問が上がっていてそれぞれいろんなことが言われています。

しずかでものどかでも、「多数派」のそれはいつか大きな声や行動に変貌しそうな予感がします。



ここからは『桜前線開架宣言』から5首引きます。これこそ2016上半期に読む本って感じです。

一枚の水つらぬきて跳ね上がるイルカをけふの憧れとせり/横山未来子
#2016上半期短歌大賞 42/55

→「水が「一枚」とされる。うすい壁のようだ。単位を変えると性質が変わる。
「けふの」と時間を限定されている。その短さもまたよい。明日には明日の憧れがあるだろう。」

と書きました。
「憧れ」って言葉が好きなんですよ。



なにもかもがゆめみたいだねー
そうかゆめか

それでがてんがいった

わかった
/今橋愛
#2016上半期短歌大賞 43/55

「→ここは夢か、それとも夢みたいな現実なのか。みるみるさめてゆく。
空いている行がこわい。こちらには何もないように見えても、きっとここで様々なことが考え合わされて結論が導かれている。」

と書きました。この作者のほかの歌もおもしろかったです。



焼けだされた兄妹みたいに渋谷まで歩く あなたの背中しか見ない/岡崎裕美子
#2016上半期短歌大賞 44/55

→渋谷への道なのに、焼け野原みたいです。物質ではない部分での飢えが東京の景色を消し去っているのでしょう。



お金の計算が好きなり桁繰り上がるたび胸はときめく/花山周子
#2016上半期短歌大賞 45/55

「→お金の歌がある。興奮したりときめいたりしている。それがいやらしくならないのはなんだろう。素直に表現しているからだろうか?」
と以前書きました。
字足らずが気になるところです。もしかして「桁」に五文字になる読み方があるのかと思いましたが、そんなことはありませんでした。
素直っていうのは例えば「好きなり」とか「胸はときめく」っていう気持ちの表現を指しています。



ではなく雪は燃えるもの・ハッピー・バースデイ・あなたも傘も似たようなもの/瀬戸夏子
#2016上半期短歌大賞 46/55

これを入れるのは迷いました。
「→「・」が三つある。「ハッピー・バースデイ」はわかるが、その前後にも「・」がある。結句から初句につながりそうで、そのあたりも形のさだまらないウネウネとしたものを感じる。ハッピー・バースデイが無限に繰り返されるような。」
と以前書きました。




さて最後は「ツイッター部門」です。
タイムラインに流れてきた短歌で良かったものはリツイートしたりなんらかの反応をして残しています。そのなかから9首選びました。


はじめからお菓子が撒いてある森で引き換えに兄妹のおもいで/安田直彦
#2016上半期短歌大賞 47/55

→ヘンゼルとグレーテルのあれですね。案内の立て札をたてるとかじゃなくて、お菓子を撒いておくというのがすごいですね。見た目は同じことでも、誤解がある。
便利とひきかえに思い出を失ったのでしょう。



外っすか ああ、なんかやってるんすよ いま なんだっけ、どっかの国の/はだし
#2016上半期短歌大賞 48/55

→この若い男性とみられる人物は、外の状況をきかれている。しかしなんにもわかってなくて曖昧なことしか言わない。
この曖昧模糊としたなかに不穏なものが感じられる。戦闘でもしているんじゃないか。そうだとしてもこの人物はいつも通りに過ごすのだろう。



ホームランバッターとエースピッチャーが教室にいる掃除の時間/シュンイチ
#2016上半期短歌大賞 49/55

よく「うたの日」の歌会が終わったあとに自作をツイートする方がいますが、そういうツイートから取りました。

「場によっては大活躍したりバチバチと勝負しあう二人が、自分たちとおなじように机を運んだり雑巾がけしている。掃除をしている時でも野球をしているときのまぶしい姿が見えている。
地味なことをしながら晴れの舞台を思っている、そういうもどかしさが懐かしい。授業を受けながら休み時間を待つとか、校庭をぐるぐる走りながら試合を待つとか、そういう忍耐がたくさんあった。」


と以前書きましたが、うーんこんなことが書きたいんじゃないぞと思いながら書いた記憶があります。
いろんな種類の才能や個性と一緒に過ごすというのも、学校生活のワクワクドキドキの一つだったのかなあ。



こんばんは「ODで死ぬには」というワードで検索して来たあなた/前田沙耶子
#2016上半期短歌大賞 50/55

→ブログの検索ワードを眺める趣味がオレにもありまして、よくわかります。検索ワードだけでも相手のことがわかったような気になることもあります。
ODという単語でつながった他人同士は、挨拶しあうこともなくそれぞれの精神で夜を過ごすのです。



何故生きる なんてたずねて欲しそうな戦力外の詩的なおまえ/陣崎草子「春戦争」
#2016上半期短歌大賞 51/55

→歌集の歌です。新鋭短歌シリーズのbotからです。
何故生きるのかたずねることもない、戦力になる詩的でない人間がこれを言っているのでしょうか。自分が言われているように思えてなんとも痛いです。



二十五階 おまえが飛んだ高さより高いところでおれは生きている/きよだまさき
#2016上半期短歌大賞 52/55

→うたよみんに投稿された歌で、「死を笑え短歌コンテスト」の入選作です。
生きることの厳しさがにじみ出ています。亡くなった「おまえ」を思いながらも「おれは生きている」。



茶と水を混ぜて飲みます…… ウワッ薄っ……水と水でも試してみます……/わなざわ
#2016上半期短歌大賞 53/55

→なんとも言えないです。いつか美味しい組み合わせに到達してほしいですね。



個包装クッキー砕け散っているどこもなんにも汚すことなく/若草のみち
#2016上半期短歌大賞 54/55

→クッキーをつい人間に置き換えて読みたくなります。部屋で餓死していたけどしばらく誰にも気づかれない事例であるとかを考えます。



「我」という文字そっと見よ 滅裂に線が飛び交うその滅裂を/大井学『サンクチュアリ』
#2016上半期短歌大賞 55/55

→文字の形に注目した歌です。「そっと見よ」がおもしろいと思いました。見てはいけないところを覗くようです。



以上がツイッター部門であります。
これで第5回ぬらっと!短歌大賞を終わります。ありがとうございました。

次回またお会いしましょう。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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