工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞 55首【3】その他歌集歌書部門

第5回ぬらっと!短歌大賞 ( #2016上半期短歌大賞 )
三つ目の部門は「その他歌集歌書部門」です。
「その他歌集歌書」といってもいろいろありますが、この半年に読んだものを大きく分けるとおおよそ
▽月刊ではないが定期的な雑誌、作品集▽個人の歌集▽アンソロジー、の三つになります。

このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら






帰りきし妻の買物袋にはわれの食べたき蜜柑はあらず/志垣澄幸「生きる」
梁 90号
#2016上半期短歌大賞 26/55


「梁」は伊藤一彦さんらの「現代短歌・南の会」というところが出している本。結社誌みたいな体裁をしている。
「→かわいい。子供みたい。」
と以前書いてます。それに尽きます。



もう誰も信じられなくなった夜もどこかで広がるオーロラがある/ニキタ・フユ「夜の約束」
うたつかい 2016年冬号
#2016上半期短歌大賞 27/55

「梁」を説明した関係でこちらもあらためて言うと、
「うたつかい」は季節ごとに発行される数十ページのzine(ジン)であります。百数十人が5首詠やテーマ詠に参加しています。
「→そうか、オーロラってそういうものかもしれな
いなと思いました。つまり、誰も信じられなくなることとの対にあるようなもの。オーロラがこの人に届いてほしい。」

って以前書きました。



<木星>(ジュピター)の名をもつサンプリングマシン 父を断ち切る音をください/正岡豊
#2016上半期短歌大賞 28/55

岡大短歌4で見つけたのでここに入っています。たぶん一昨日も書きましたが、古い歌でもこの半年に印象に残れば対象になります。
今日読んだネットプリントのこともありますし、正岡さんは今気になる歌人の一人ってことになりますね。



補聴器を外しゐたれば亡き妻の今はの言葉聞きもらしけり/山口啓輔
平成27年度 NHK全国短歌大会入選作品集
#2016上半期短歌大賞 29/55

「→これは何度も思い出している歌。そんな悲しい事があっていいのかと。」
と以前書きました。オレの中では、思い出す歌はいい歌、ということになっています。



おれはおれの、おまえはおまえの喪に服す 切符を裏返しにいれてみる/洞田明子『洞田』
#2016上半期短歌大賞 30/55

名義は洞田明子ですが、この歌の作者は濱田友郎さんです。

ほかにもおもしろい歌がありまして、迷いました。
どうしても一首単位で見てしまうんですよねえ。もっと違うところにこの本の持ち味はあるのかもしれませんが。



夕なぎさ子牛に乳をのませ居る牛の額のかがやけるかも/古泉千樫『川のほとり』
#2016上半期短歌大賞 31/55


以前から、「筑摩現代文学大系68 現代歌集」という本を少しずつ読んでいて、結局まだ読み終わってません。十数人の歌集を一冊ずつ収録した本です。
そこから今回は三首選びました。


大(おほ)きなる声ひとつだに挙(あ)げずして心さみしき秋は過ぎにき/中村憲吉『しがらみ』
#2016上半期短歌大賞 32/55

「→大声をあげないことを言ったことで、声がきこえてくるということがある。秋に大きい声をだして、それでさみしさがどうなるのだろう。叫びたい思いが内側にあるのか、などと想像する。」
と以前書いています。
んん。どうでしょうねえ。言葉にならないさみしさを感じとりたい歌かなと今は思います。


金輪際(こんりんざい)なくなれる子を声かぎりこの世のものの呼びにけるかな/木下利玄『紅玉』
#2016上半期短歌大賞 33/55

→「声かぎり」ではあるがOの音が全体をつらぬいていて、低いトーンの一首だ。
「金輪際」という言葉は、強い拒否、否定が感じられる言葉だ。生と死のあいだに大きな隔たりがある。
(以前書いたのをちょっと書き替えました。)


水平線に向けて出航してやがて背後に現れる水平線/池田行謙『たどり着けない地平線』
#2016上半期短歌大賞 34/55


うってかわって現代の歌集からです。全体的にはのれない歌集でしたが、いくつかいい歌がありました。
「→経験はしてないけど、考えてみると、それはそうなるだろうなと思う。水平線にもてあそばれて、自分がどこにいるのかわからなくなるようだ。」
と以前書きました。


この雨の奥にも海はあるだろう きっとあなたは寝坊などして/千種創一『砂丘律』
#2016上半期短歌大賞 35/55

「さっき連作という単位で読まないって書いたばっかりだけど、この「終りの塩」はよかった。たぶんこれ初めて読んだ。」
と以前書きました。
いい歌が多いんです。あんまり有名な歌を今さら選びたくないのと、ほんとに好きなのを選びたいという気持ちがぶつかってこういう選択になりました。


引き潮の渚で拾ってしまったのあなたの部屋の窓の破片を/鈴木美紀子
穂村弘『短歌ください 君の抜け殻篇』
#2016上半期短歌大賞 36/55

→これについてはオレはなにも言わなかったんです。穂村さんのコメントを見たらオレが書くことはないなと思って。それは今見直してみてもそうです。


欠席のはずの佐藤が校庭を横切っている何か背負って/木下龍也
穂村弘『短歌ください 君の抜け殻篇』
#2016上半期短歌大賞 37/55

これは逆にいろいろ書きたくなったのでした。
「→こういうこと、あったなあと思う。思うけど、幻みたいな光景だとも思う。
「何か」は気になるね。カバンじゃないみたいだし。「佐藤」という名前がはっきりしてるけど、具体的なようで、どこにでもある名字で、なんの情報も含まれていない。名前があるのに匿名的なのだ。
校庭を横切るのも変なルートだよねえ。学校にもよるかもしれないが、普通に登下校するなら校庭を横切ったりするかなあ。
佐藤はどこから来てどこへゆくのか。ほんとに佐藤なのかも不安になってくる。影を背負った幽霊的なものじゃないのか。」

と以前書きました。



まだ続きます。次回で終わります。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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