工藤吉生が選ぶ 2016年上半期短歌大賞【2】結社誌部門

2016年上半期のおもしろかった短歌をオレが独断と偏見で選ぶ、第5回ぬらっと!短歌大賞。( #2016上半期短歌大賞 )
四部門のうちの二つ目、結社誌部門をご紹介してまいります。


このブログではコメントつきで紹介しますが、歌だけをまとめたものもあります。
#2016上半期短歌大賞 55首 - Togetterまとめ https://t.co/X60WvjAcKc
歌だけのまとめはこちら



長い間よくしてくれてありがとうと言われて君はさみしい息子/岩尾淳子
未来 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 14/55

→2015年の本ですが、いつの本であってもオレが2016年上半期に読めばこの賞の対象であります。
「→親が子にかけるものをなんと言うべきだろう。
「よく」する、とは他人行儀な言葉だ。」

と以前書きました。


早朝の稲垣吾郎はぎこちなく(今日の天気は)(雨)(のち)(くもり)/鈴木麦太朗
未来 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 15/55

「→カッコに入れただけで稲垣吾郎の声になる。ふしぎ!」
と以前書きました。丸括弧/パーレンに入れると言葉がささやきのようになる効果があります。一息に言わず何度も区切られているのがぎこちなさなのでしょう。


直角に頭を下げて二分経つ次は膝つくほかなき謝罪/井元乙仁
未来 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 16/55

一月号ですが、十月号の評のページなのでこれも2015年の歌です。
「→佐伯裕子さんの欄でオレが特に注目しているのがこの方。
謝罪してもゆるされないつらさがピリピリとつたわる。」

と以前書きました。
なんと長い二分でしょうか。


ぼうりょくの上手なひとだかなしげに鍵束に似た楽器を抱いて/氏橋奈津子
未来 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 17/55

「→鍵束はいろいろに見ることができて、暴力ということならば監禁のための鍵のようにも見れる。「かなしげ」に「抱いて」いる顔つき手つき、つまり暴力を暴力っぽく見せないのがぼうりょくの「上手」さなのかな。」
などと一月のオレが書いてました。


この学校の先生たちは優しいと言ふ生徒ひとり水際にゐる/野田オリカ
未来 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 18/55

この方はいまは違う名前で発表してらっしゃるようですが、この時のお名前のままとしました。
「→印象的な一連だった。生徒と教師の関係のむず
かしさを言っているんだと読んだ。」

と以前書きました。水際にいるだけで、飛び込んでしまいそうな危うさがあります。


チョークもて路面に描いたオムレツを食はされてをり柴犬のりん/桑田靖之
未来 2016年2月号
#2016上半期短歌大賞 19/55

「犬の種類(柴犬)とか名前(りん)とか、
路面のオムレツと直接は無関係な情報が生きている。」
って書いてます。
子供と犬の関係が楽しそうでいいですねえ。


冷凍の炊き込みご飯をもどし食ふ妻手作りの最後の味に/矢野正二郎
塔 2015年12月号
#2016上半期短歌大賞 20/55

→以前のオレはこれに対してなにを書いたんだろうと思って確認したら、コメントしてませんでした。
昨日は車イスの老人の歌に何も言えませんでしたが、こういう内容にはなんとも言えません。


ひとを抱くようにあなたは陽光を抱いたカーテンまとめるときに/坂井ユリ
塔 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 21/55

「→かすかな嫉妬があるのか、美しいと思って見ているのか。
二人で一夜を明かした朝の部屋のカーテンだと思いこんでたけど、別にそうじゃなくても読めるな。」

と以前書きました。


これくらい大きかったと広げたる手をだんだんとすぼめるあなた/村松建彦
塔 2016年3月号
#2016上半期短歌大賞 22/55

「→驚きを伝えようとしたが、時間を経て冷静になってきたのか。こういうことはある。
何が大きかったのかわからないのもまたよい。」

と以前書きました。記憶の変化が広げた手の幅の変化に現れているのがおもしろいです。見えないものが見えるおもしろさ。


人にながき子供の時代「どこからでもかかつて来い」が舌につかへて/朝井さとる
塔 2016年4月号
#2016上半期短歌大賞 23/55

「→「どこからでもかかつて来い」は正義の味方が言いそうなセリフだ。かっこいいことを言いたくてこういうのを真似するんだけど、言い慣れないもんだからうまく言えない。
「人にながき子供の時代」は、大人になってからも記憶のなかで長く子供時代の出来事が繰り返されるということだと読んだ。」



弟とひとつを取り合いせしころの天のかみさまのいうとおり/山下裕美
塔 2016年5月号
#2016上半期短歌大賞 24/55

「→子どもの頃にしかやらないような物の取り合いやケンカがある。その一方で子どもの頃にしかない純粋さもある。
どちらもひっくるめて、しみじみする。」

と以前書きました。子供時代を振り返った歌が続きましたが、そのへんにオレのツボがありそうです。


無神経 泣きそうで目が開かなくてとうてい分からない花の唄/恋をしている「ひかりのくに」
なんたる星 2016年1月号
#2016上半期短歌大賞 25/55


→いやよくわかんないんですよ。目をあけると泣きそうだから開かないのか、もっと違う理由で開かないのか。分からないのは見えないから分からないのか。
でもこの連作全体がそうなんですが、ひかりにあふれていて、なにか強く感じるものがありました。
泣きそうな気持ちがあって、開かない目があって、花があって唄があってわからなさがあって。
それって、生まれてくる時とか、幸せに死ぬ時なんじゃないかなあ、と思いました。」

などと、以前長く書きました。
生まれた時か、死ぬ時か。泣きそうで唄が聞こえるのだから、前者の状況でしょうか。



「結社誌部門」はここまでです。次は、「その他歌集歌書部門」です。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

突然のご連絡失礼致します。
きみきと申します。
懸賞のブログサイトを運営しているのですが、
貴サイト様を拝見させていただきまして、
是非相互リンクさせていただきたくご連絡差し上げました!
URL: http://goo.gl/an6K0I
お手数をお掛け致しますが、ご検討のほどよろしくお願い致します。
プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

最新記事
リンク
月別アーカイブ
フリーエリア
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR