「岡大短歌4」を読む  ~あの日見たひかりは蛍だった、ほか

「岡大短歌4」を読む。
往復書簡の企画などあり、前号より充実している。



眠そうな君はとなりであの日見たひかりは蛍だったと話す/川上まなみ「ぬばたまの」
→「眠そうな」がいきている。「あの日見たひかり」が夢のなかのことのようだ。
この「君」は寝起きなんだとはじめは読んだ。寝ている間に「あの日」の蛍に思いあたったんだと。


暗闇に目が慣れてきて落胆は海より深い青だとわかる/藤原奏「イミテーション」
→真夜中に部屋で目覚めてしばらくしたら部屋のものが見えてきたとか、そういう歌だと思って二句までを読んだら、三句以降で迷ってしまう。
この「暗闇」はそんな意味ではなくて、心理的なものなんだろうな。海もでてくるから、海底にいるような感覚にもなる。落胆に色がついて見える感覚がいい。
自分の心をじっと見つめてなにかを見出だすというの、好感を持てる。


教科書がない教室がわからない濡れた自転車きょうも行けない/水嶋晴菜「青」
→三つのことからできている。ひとつひとつは些細なことだ。自転車くらい拭いたらいいじゃん、と思ったりもする。
でもそのしょうもないようなことが解決できない気がして心配でたまらなくなることがある。夢のなかの学校かと思った。



灰皿の中身のような街でまたベビーカステラ買えるだろうか/山田成海「生命線が短いきみに」
いや、正確には「こゆびくん」が詠んだ歌だということになるんだろうか。

「こゆびくんとやくざくん」という山田成海さんと石原ユキオさんの往復書簡があって、これがおもしろかった。
そこから引いた。

こゆびくんがなんだか可愛いキャラクターで、やくざくんと必ずしも噛み合ってないような気もしたけど、離ればなれになるというのはそういうことかもしれないなあ。お互いを思っていることには変わりない。


それから、川上まなみさんと大森静佳さんが口語の自然詠について連作をつくり書簡を交わしている。

川上さんの連作を読んで気づいたのは、字余り字足らずが増えたなということ。連作八首のときは8首中6首は57577だったけど、こちら口語自然詠では15首中3首だけが57577だ。

初句六音が五首あって、そのうち四首は助詞をつけた結果そうなったものだ。
初句はわりと余っても違和感が少ないと言うね。助詞を省く違和感のほうが大きいことがある。


眠る山は丸みを帯びて今日の夜雪が降るかもしれないと思う/川上まなみ「明るい雪」
→直接は雪っぽくない「眠る山」や「丸み」から雪の予感がでてくるところを良いと思った。
ふと、雪の最初のひとひらが落ちてきそうだ。

以前「あおきカフス」という連作の冊子をここでやった。大森さんの講座に川上さんが参加していたけど、そこからこの往復書簡につながってるんだな。トンネルが開通した気分。



<木星>(ジュピター)の名をもつサンプリングマシン 父を断ち切る音をください/正岡豊
一首評では、この正岡さんの歌がいいなと思った。
そうか、親子の軋轢なのか。オレはてっきり物理的に父という人体を真っ二つに断ち切る「ギュルルルルル」みたいな音かと思った。

言われるとそっちに鞍替えしたくなる読みというのがあって、っていうことは、その前に思ってたのはダメな読みなんだろうけど、ダメなりに捨てられない。



これはおせっかいかなあと思いながら言うんだけど、一首評の『』のなかは歌集、著書のタイトルですよね。ってことは、木下さんの『小道具の月』とかは違うでしょう?
書くスペースが大きいんだから、出版社名やいつごろ出た本なのかとか、本や出典の説明があると親切かなと思った。


これは誰も悪くないけど、「主体」「作中主体」って言葉を連発されるのはどうも苦手だなあ。「作者」も「主人公」もなんか違うし、ほかにいいのがないからオレも使うことがあるけど、どうもなあ。なんかないものかなあ。
たとえば塔なんかだと「作者」を使う評を見る。病気の歌だと、作者の回復を願うような言葉が評に含まれていたりする。


日記では、加瀬さんの「サンバのリズムで鼻くそでもほじりたい気分」がオレのなかでヒットした。
でもオレは焼プリン派。



終わります。
んじゃまた。
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プロフィール

工藤吉生(くどうよしお)

Author:工藤吉生(くどうよしお)
仙台市在住。2011年に枡野浩一さんの「ドラえもん短歌」の影響で短歌を始めました。

▽短歌雑誌「短歌研究」「角川短歌」などの読者投稿欄、
▽新聞歌壇「毎日新聞」「日本経済新聞」「読売新聞」「河北新報」
▽テレビ「NHK短歌」
などで作品を発表してきました。

短歌結社「塔短歌会」に2012年から3年間所属していましたが退会し、現在は「未来短歌会」彗星集に所属しています。

▽角川短歌ライブラリ刊行記念「わたしの一首」コンテスト大賞受賞。
▽第57回短歌研究新人賞候補。
▽Eテレ「NHK短歌」年間大賞(2016年3月、佐佐木幸綱選)。

ゴールデンボンバーの歌広場淳さんにツイッターで短歌をほめられたことがあります。

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